InAequabilitas

Category : 有毒植物

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身近な弱めの毒草

春ですね。色々な花が咲き始めて毒草の識別に便利な季節になりました。
というわけで(何が?)、道端や庭先でよく見かける・或いはそのうちよく見かけるようになる弱い毒草たちを幾つか紹介してみる。



チューリップ Tulipa gesneriana
t. gesnerianaユリ科チューリップ属の多年草。説明するまでもないくらい有名で、幼稚園児ですら知っている有名な花だが、とりあえず毒がある。球根で増やすのは種がほとんどできないからで、というのも蜜がないために昆虫が来てくれないからである。探してみたら写真が一枚しかなかった。あまりにありふれているので撮る気も失せるからかもしれない。
毒はツリピンとツリパリンで、全草特に球根に多く含まれる。普通は嘔吐や皮膚炎くらいだが、心臓毒であるともいう。これを知らない大人はいないはずで誤食こともないだろうが、幼稚園や小学校で植えていることもあるし、子供なら何でも口に入れようとするので中毒事故が起こっていても不思議ではないはずなのに意外とそのような話は聞かない。



パンジー/ビオラ Viola tricolor
v. tricolor
種名が"tricolor"(三色)なだけに三色のパンジーが写っている写真を探してみた(笑)。パンジーもビオラも分類学的は同じものだが、花径が4cmより小さいくらいのものが園芸ではビオラと呼ばれている。区別は結構適当である。見た目が豪華なのがパンジー、可愛いのがビオラという意味不明な分け方もあるそうな。スミレ科スミレ属の一年草で、耐寒性があるので花期は春だけではなく実は初冬から既に咲き続けている。ビオラのほうが開花期はやや短いが、更に育てやすいという。楕円形の根生葉は羽状の大きな托葉を持ち、縁に鈍い鋸葉がある。茎高はせいぜい10cmくらい。種から育てることも出来るが、その必要がないくらい鉢植えが大量に安く出回っている。
v. tricolor-1こういうのがビオラ。野生種は写真の左下に写っているもののように、上二枚が紫色+下三枚が黄色である。
種子や根茎にビオリン、ビオラルチンやその他のサポニン類・グリコシド類を含み、誤食すると嘔吐や神経麻痺、心臓麻痺を引き起こす可能性がある。これほど一般家庭に浸透しているのだから、子供の誤食事故が起こっていてもいいくらいなのにこちらもほとんど聞かない。



マーガレット Chrysanthemum fructescens
c. fructescens
キク科アルギランテム属の多年草。花期は3月頃から初夏までで、育てやすいので園芸店にもよく出回っている。上の写真のような品種が最も一般的だが、八重のものや色のついたものなど様々な品種がある。毒草と呼ぶと誇張なくらい弱い毒草で、植物体を傷つける時に出る汁にミニテルペンラクトンが含まれ、弱い皮膚炎を引き起こす…かもしれない…という。



ヒヤシンス Hyacinthus orientalis
h. orientalisユリ科ヒヤシンス属の多年草。花期は3-4月で、強い芳香のある花を咲かせる。この匂いを芳香と評するかどうかは人によって分かれると思うのだが…とにかくかなり強烈な匂いを放つ。普通に栽培されるダッチヒヤシンスのほか、花がやや小さく少ないローマンヒヤシンスがある。耐寒性が強く(ダッチ系のほう)、むしろ冬の寒さに当てないと花が咲かない。水栽培にすることもできる。ローマン系は自然分球しやすいが、ダッチ系はあまり分球せず増やしづらいので、増やしたければ球根を掘り上げる時に刃物で底に傷をつけて植え付けまで貯蔵しておく(但し親球は二度と花をつけない)。h. orientalis-1
鱗茎をはじめとする全草に蓚酸カルシウムを含み有毒。ブドウヒヤシンスと呼ばれる植物(ムスカリ)があるが、これは属から違っており無毒である。蓚酸カルシウムは不溶性であるため、汁などに触れるとその針状結晶が物理的損傷をもたらす。手などであれば炎症、食べれば皮膚より更に弱い粘膜にそれが突き刺さるわけだから口腔内の痛みや浮腫、酷いと嚥下困難や呼吸困難が起こる。嚥下されると食道の糜爛や胃腸炎、嘔吐、下痢が引き起こされる。だが不溶性であるからこそ体内のカルシウムと結合しづらく全身症状を起こすことは稀である。また、結晶が皮膚や粘膜に突き刺さるためには植物細胞が破壊されなければならないので、咀嚼されたり潰されたりしない限りあまり被害はない。しかし一応球根や切り花を扱う場合はゴム手袋をしておくほうがよい。扱った後はよく手を洗う。うっかり目を擦ったりすると痛いだけではなく、結膜炎や眼瞼浮腫が起こる可能性もある。早急に洗い流さなければ結晶が沈着して角膜障害を起こすこともある。



トウダイグサ Euphorbia helioscopia
e. helioscopia
トウダイグサ科トウダイグサ属の一年草或いは二年層。茎高は後述のムラサキケマンよりやや低いくらい。上の写真はこれでも花が咲いている状態。中茎では僅かに鋸葉のある倒披針形・箆形の葉が互生し、茎頂では丸みの強い箆形の葉が五輪生する。3-4月に茎頂から放射状に独特の杯状花序をなす花茎を伸ばす。雄花と雌花がある。
茎を傷つけると白い乳液を出し、これに触れると皮膚炎を起こしたり水疱を作ったりする。毒性分はユーフォルビンやタンニンで、全草に含まれている。食べ過ぎると腹痛・嘔吐・下痢・胃腸炎・心悸亢進・眩暈・痙攣を起こすが、少量では口内炎くらいで済むんじゃないだろうか。しかし根茎の場合は激しい下痢を起こすことがあるという。



ラッセルルピナス Lupinus polyphyllum
l. polyphyllumマメ科ルピナス属の多年草(宿根草)だが、暑さと湿気に弱いため一年草や二年草として扱われることも多い。茎高は50-180cmにもなり、50cmくらいの矮性種はミナレットと呼ばれる。根生葉は長い柄を持ち掌状複葉となる。4-6月に30cmほどある総状花序を成す蝶形花を多数咲かせる。花後に繊毛の生えた莢状の果実をつける。種子は非常に苦い。酸性土壌を嫌い、日当りと水はけのよいやや乾燥した場所を好む。太い根が真っ直ぐ深く伸びるので移植を嫌う。9月から10月に播種して増やす。
全草、特に種子にルピニンとスパルテインを含み、量によっては嘔吐や心臓麻痺を引き起こす。妊婦が食すると流産する可能性もあるとかどこかで読んだような気がするが記憶がちょっと曖昧だ。

l. polyphyllum seedsl. polyphyllum leaves



ムラサキケマン Corydalis incisa
c. incisaケマンソウ科キケマン属の二年草。茎高20-50cmほどで、半日陰を好む。葉は複葉となり、鋸歯を持つ。花期は4-6月頃。赤紫色の花冠は筒状で、長さは約2cmである。地下に塊茎を持つ。茎を折ったりすると悪臭のする汁が出る。6月頃に結実し、莢状の果実から黒い種子をまき散らす。
全草にプロトピンを含み、嘔吐・眠気・呼吸麻痺や心臓麻痺が引き起こされる可能性があるが、普通に誤食する程度では毒性は弱い方と言える。ウスバシロチョウの幼虫の食草となっており、成虫のウスバシロチョウも全身に毒を持つ。

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夾竹桃科詰め合わせ

キョウチクトウNerium indicumキバナキョウチクトウThevetia peruvianaオオミフクラギCerbera odoramとミフクラギCerbera manghasプルメリア(インドソケイ)Plumeria rubraはそれぞれの記事を参照。
キョウチクトウ科(Apocynaceae)はリンドウ目のうちの一科で、180属ほどが存在する。APGの分類体系ではガガイモ科もキョウチクトウ科に含まれている。キョウチクトウ亜科(Apocynoideae)とインドジャボク亜科(Rauvolfioideae)という二つの亜科に分かれ、共通する点は大きく分類して3つ、A.葉序 B.花序と花の様子 C.果実の特徴 である。
A.葉序としては、キョウチクトウ科には対生するものが多い。しかしキョウチクトウのように三輪生したり、プルメリアのように互生したりするものもある。そして常に単葉となる。因みに多肉植物となる種も存在する。BとCでは、花序は基本的に円錐花序であり、また五弁の合弁花がほとんどである。蕾の時にアサガオの如く回旋するのが特徴。雄蕊は五本ある。子房上位で、果実は2裂する。有毒の物が多いとはいえど、液果は甘く食べられる物もある(カリッサなど)。

以下はキョウチクトウ科植物の写真(HD発掘品)の詰め合わせ。



ニチニチソウ Catharanthus roseus
catharanthus_roseus
ニチニチソウ属。原種(マダガスカル原産)は匍匐する小低木となるが、日本では一年草。茎高は約50cmで、鉢植えとしてよく栽培される。名の由来は花期の間(かなり長い)、毎日毎日絶えずに花を咲かせ続けることから。乾燥や暑さには強いが寒さには弱い。葉は長楕円形で対生し、全縁で長さは6-12cm。夏から秋に(非耐寒性のはずが冬に咲いていることさえある)、高杯形で赤紫、白等の花(径2-4cm)を咲かせる。果実は細長い莢状の袋果で、種子に長い毛がある。ツルニチニチソウ属と一緒に扱われた事があるが、現在は独立したニチニチソウ属がある(当時の学名はVinca rosea)。
catharanthus_roseus-1
全草にビンクリスチンビンブラスチン(旧名ビンカレウコブラスチン)、ビンドリン等、10種あまりのアルカロイド(総称ビンカアルカロイド)を含み、抗腫瘍剤・抗癌剤として用いられる。最初の二つにはチューブリン脱重合による細胞分裂阻害作用があり、他のアルカロイドにも白血球の作用を抑えたり、神経系統(特に中枢神経)に対する刺激作用があったりするものがある。食すると嘔吐、痙攣、筋肉麻痺、心機能障害また幻覚をも引き起こすが、それどころか催奇性もあるという。とはいえ少々食べたくらいでは劇しい毒性は示さない。



ツルニチニチソウ/ヒメツルニチニチソウ Vinca major/Vinca minor
写真はどれもmajor。
vinca_major-1vinca_major-2

ツルニチニチソウ属。多年生の蔓性草本で、茎の高さ(長さ?)は30-40cmになる。葉は卵形で対生する(minorのほうはmajorよりやや細め)。春から夏にかけて高盆形で青紫色の花(径4-5cm)を咲かせる。minor種の花は青紫よりは赤紫という感じ。よく似ているが、萼片の毛の有無と匍匐根で区別する事ができる(萼片が無毛であり、匍匐根が茎の各所で発根しているほうがminor)。また八重咲きのものもある(ペレナ種)。斑入り種はフクリンニチニチソウと呼ぶ(右の写真)。耐寒性は比較的強い。因みにminorのほうが耐寒性は更に強い。
ビンカアルカロイド(上述)は含まないが、いずれもインドールアルカロイドを含み、民間で医薬として用いられてきた(降圧、催吐、子宮出血や喀血等の止血)。minorに含まれるビンカミンには血圧降下作用があり、脳内血流を改善して記憶力・集中力を上げるという。薬と毒は紙一重、どちらも毒性を発揮しうる。minorには幻覚作用もある。



アラマンダ Allamanda cathartica
allamanda_cathartica
アリアケカズラとも呼ばれるようだ。アラマンダ属の常緑低木。成長がやたら速く、剪定をこまめにしないと長さはあっという間に5-10mにも達してしまう。高温多湿の所を好み、日照不足だと花が咲かなかったり葉がまばらになったりする。葉は3-4輪生し、枝の上部では対生或いは互生していることもある。形は披針形から倒披針形で、長さは10-15cm、幅約3cm。3-8月に枝先の集散花序に黄色の芳香ある五弁花をつける。径約10cmの花冠の内部には褐色の線が入る。10-12月には球形で大きさ3cmほどの棘のある朔果が実る。種子には翼があり、径2cm程度で扁平である。しかし結実するのは稀なので増やすのは主に挿し木で行う。
allamanda_cathartica-1
全株が有毒で、特に乳液の毒性が最も強い。毒性分はラクトンの一種であるアラマンディンで、抗菌作用がある。抗癌作用もあると考えられている。下剤の調合やマラリアの治療にも使われるらしいが、誤食すると唇が赤く腫れたり、口の中が乾いたような感じになる。続いて下痢、嘔吐、高熱等の症状が現れる。乳液が皮膚に触れると水疱や炎症を引き起こすのはもう言うまでもない。反面、塗布剤が湿疹等の皮膚病に効くとも。
allamanda_cathartica-2



アデニウム Adenium obesum
adenium_obseum-1
アデニウム属。日本では砂漠のバラとか天空のバラなる名称で通っているらしい。常緑性、乾燥地や寒冷地では落葉性の低木。高さ1-3mになり、生長スピードに個体差がありすぎるとか(笑)。盆栽に用いられる事も。葉は螺旋状につき、革質全縁、長さは5-15cmで幅は1-8cm。花は径4-6cm、写真のようにむやみやたらと派手な色である。
根と茎の汁液に30種ほどの強心配糖体(主成分Oleandrigenin-β-gentiobiosyl-β-D-thevetoside)のほかプレグナン数種(16,17-dihydroneridienone A等)を含み、タンザニアでは矢毒として用いられる。
adenium_obseum-2



テイカカズラ Trachelospermum asiaticum
trachelospermum_asiaticum
テイカカズラ属。名の由来は藤原定家の墓に生えてきたことから(一説に、死後も式子内親王を忘れられなかった藤原定家がこれに生まれ変わって彼女の墓に絡み付いたとも)。常緑の蔓性木本で、茎から気根を出す。樹皮の突起は気根の痕である。楕円形から狭長楕円形の葉は対生し、長さ3-8cm、革質で表面に光沢がある(幼木のほうがその質感は強い)。若い葉は葉脈に沿って白い斑紋が入ることが多い。花期は5-6月、垂れ下がった集散花序に白い花(径2-3cm)を咲かせる。花色は白から淡黄色に変化する。花弁は各々が捻れるが、回旋する方向がキョウチクトウと逆となる。二個が対になる莢状の細長い袋果は、熟すると縦に裂開して長い毛を持った種子を飛ばす。下の写真のように斑入り種もある(園芸の方面ではハツユキカズラなどと呼ばれるようだ)。また、キョウチクトウアブラムシが寄生することがよくある。
乳液を含む全草にトラチェロシド等を含有し有毒。皮膚炎を起こすのは勿論、誤食すれば呼吸麻痺や心臓麻痺を引き起こす。
trachelospermum_asiaticum



チョウジソウ Amsonia elliptica
amsonia_ellipticaチョウジソウ属。実はチョウジソウを狙って撮ったのではなくて、気付いたら画面の隅に映っていたのでトリミングしてきた写真(苦笑)。それにellipticaではなくangustifoliaとかtabernaemontanaであるかもしれないけれどもよく解らない…。
多年生の草本で、葉は披針形で長さ10cm弱、互生する。花期は初夏のころで、茎頂の集散花序につく。花冠の大きさは1.0-1.5cm。一花がチョウジ(香料をとる植物の一種)の花に似ているため、この名がある。果実は二股の袋果である。株分けや種蒔きで増える。また、ほとんどの都道府県では野生絶滅或いは絶滅危惧種に指定されている。
全草にエリプティシン、アリチリン、ビンカミン、β-ヨヒンビン等のアルカロイドを含み、血管の収縮や血圧低下を引き起こす。麻痺を起こすこともある。



オオバナカリッサ Carissa macrocarpa (Carrisa grandiflora)
carissa_macrocarpa
カリッサ属。常緑の低木で、樹高は数mになる。枝には棘がある(下の写真を拡大すれば見える)。果期は基本的に夏(しかし気候条件さえ整えば一年中結実する)。未熟の果実(液果)は皮に苦い乳液を含んでいるが、熟した実は酸っぱく食べられる。種蒔きで増やす事ができ(蒔いてから2-4週で発芽する)、育てるのも容易であるが苗木の生長はもどかしいほど遅いらしい。発芽から二年目くらいで果実を付け始める。乾燥や寒さにも強く、気温は氷点下5℃まで耐えられる。
carissa_macrocarpa-1
熟した実以外は全株が有毒。それも無毒なのは(イチイと同じく)果肉だけで、中の種子はやはり有毒。食べられるからといって安心しないように…。
carissa_macrocarpa-1



Wrightia religiosa
wrightia_religiosa
リグチア(ライティア)属。実は属名を含め和名を知らない。常緑高木。花はピンクから淡黄色らしい。
根に何だかよくわからない成分(ある種のアミノ酸、有機酸と糖類)を含み、全株から出る乳汁も有毒。誤食すると悪心、嘔吐、頭痛、眩暈等の症状を起こす。

[2012 9/24追記]
同属のセイロンライティア Wrightia antidysenterica の花。


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トウアズキ - 相思子

abrus_precatorius
上の写真が何であるかわかる人は恐らく漢方薬に詳しいか毒に詳しいかのどちらかだろう。世界五大猛毒に数えられるリシンをも上回るといわれるアブリンを多量に含有するトウアズキの種子である。
長さを測ってみたところ、基本的に長端は5mm強。重量は0.10gから0.13g。漢方薬店から購入したのでまだまだ大量にある。販売単位が"粒"などというけちなものではなく"斤"(500g)だったために1斤分どっさり溜まっているわけなのだが、個々の重量からすると4500粒ほどある計算になる。優に満員電車数輛分の人間を殺すに足る量だ。それだというのに随分と安かった(笑)。
やはり外観が漆細工のように美しい事からか、毒性よりはむやみとロマンチックなイメージのほうが一人歩きしているような気がする。僕がこれを買ったときも毒性については一切説明がないのに「相思豆:恋人たちの祈りを届けます」などと全然漢方に関係のない説明がしてあったし(…)、別名も中国語では相思豆・愛情豆・美人豆・鴛鴦豆など、随分と雅やかなものである。英語でもRosary peaといって何だか敬虔そうなのだが(トウアズキはロザリオRosaryを作るのによく用いられた)、ロザリオやその他のトウアズキを使った装飾品を作る職人がトウアズキを扱った時にうっかり指を刺してしまったため(種をビーズにするため穴を開ける)、死亡したという例があるのらしい。侮ってはいけない。

トウアズキAbrus precatoriusはトウアズキ属の蔓性多年生落葉草本で、熱帯(北緯16°以南)に自生する。日本では西表島と石垣島に自生しているという。枝はやや木質化し、高さは3-6mにもなる。葉は偶数回の羽状複葉で小葉はそれぞれ全縁で長楕円形をしており、長10-22mm、幅4-6mmで8-15対ある。葉の裏には疎らに毛が生えている。晩夏から初秋にかけて頂生或いは腋生する総状花序に蝶形の花をつける。花は淡紫紅色だが、稀に白のものがある。花後には繊毛の密生した莢(革質、長2-6cm、幅1.2-1.4cm)が密生し、中には上の写真のような種子が5粒ほど入っている。種子は全体的に赤いが、臍の部分が黒く色づく。純白になるものもある。
やや酸性寄り、または中性で水はけの良い湿潤な土壌を好む。熱帯に自生する事から判るように、日射や乾燥に強く、耐暑性もあるが、耐寒性と耐陰性は弱く、4℃以上ないと越冬しない。自生地の年平均気温は18-26℃前後である。播種は10月頃に開裂していない熟した莢から種子を採取して行う。或いは翌年の春まで種子を乾燥保存しておき、それから播種してもよい。種皮が硬いので、蒔く前に傷をつけるなどしておく。

肝腎の毒性分は上に触れたアブリンAbrin(CAS番号1393-62-0)である。アブリンはaからdまで4種類あり、下の図はアブリンAの構造。またアブリンの他にアブルス・アグルチニンAbrus agglutininという蛋白質も含まれており、これはアグルチニンと入っている事からも判るように血液凝集素だ。因みにAbrine(C12H14N2O2)という物質もトウアズキから見つかっているが、これは毒ではない。abrin-a
黄白色の不定形粉末であり、分子量はaからdのどれもが63000から67000の範囲内にある。暗殺・化学兵器に使用されていたこともある有名なリシンと同じ糖蛋白質で、作用する経路もリシンとほとんど同じだ。構造もそれと同じくA鎖とB鎖からなり、B鎖が細胞表面に結合し、エンドサイトーシスを誘導してA鎖を細胞内に送り込み、そしてA鎖が28s rRNAの中枢配列を切断し、蛋白質の合成が停止する。このため細胞死が引き起こされる。毒性発現に蛋白質の合成阻害という比較的面倒な過程を経るため、中毒症状が現れるまでにやや時間を要する。数時間、時には数日の潜伏期間を経たのち、咽頭の灼熱感・食欲不振・流涎・嘔吐・疝痛・激しい下痢に加え、脱水症状、虚脱、感覚鈍麻、ショック、チアノーゼ、乏尿、呼吸困難、循環器不全、運動失調等が起こる。また40℃の高熱や口腔・食道の潰瘍が見られ、末期になると溶血・血尿などの症状が現れ、最終的には呼吸麻痺で死亡する。
死体を解剖してみると、消化管や膀胱の粘膜に斑状出血が確認され、肺水腫、多臓器の鬱血、そして網膜出血が見られる。

アブリンの致死量は0.01mg/kgと推定されており、具体的な数値ではマウスLD50=0.020mg/kg(腹腔内注射)、マウスLD0=0.7μg(静注)などが報告されている(リシンの75倍猛毒という数値はどこから来たんだ…?[1])。馬は種子2オンス(50g強)で死亡するようだが、牛・山羊・犬はそれよりも感受性は低い。人間は、よく咀嚼された種子であれば1粒でも死亡する可能性がある。体重の0.00015%のトウアズキ種子が致死量とされる。
種皮がかなり硬いものだから、種子をただ噛まずに飲み込んだだけなら大事に至ることは少ないが、それでも直ちに医師の診察を受けるべきである。また、アブリンは蛋白質であるため、加熱されると不活性化される(次亜塩素酸塩でも不活性化することができる)。そのため漢方などではまず種子を煮てから治療に用いている。しかし60℃の環境下では30分間毒性が保たれ、80℃なら30分以内にほとんどが無毒化する。葉や根、枝などにアブリンは含まれず、むしろ甘みがあるので天然甘味料とされる。これはグリチルリチンという、甘草に含まれるのと同じ成分のためである。

ところで何で上の写真に7粒しか写っていないかというとこれが1.5mLのマイクロチューブにちょうど収まる量で携行に便利だから(殴)。他の植物を致死量溜めるとなるとどうにも嵩張ってしまっていけない。ほら、もしもの時に一息に口に放り込めば…



[1]: リシンの致死量―2.7-5μg/kg(マウス、吸入); 22μg/kg(ヒト、注射或いは吸入、概算); 20-30mg/kg(ヒト、経口、推定)

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お飲み物はいかがなさいますか

コーヒー、ココアとそれからテキーラがございます。


coffea_arabicaコーヒーノキ属Coffea spp. はアカネ科の一属。一枚目の写真はアラビアコーヒーノキ(アラビカ種)Coffea arabicaで、二枚目はリベリアコーヒーノキ(リベリカ種)Coffea liberica。三大品種はこれら二つのほかにロブスタコーヒーノキ(ロブスタ種)Coffea canephora var. robustaを含む。最も生産量が多いのはアラビカ種で、レギュラーコーヒーに用いられる。モカ、コナ、スマトラ等多くの品種を持つ。ロブスタ種は廉価コーヒーに使われ、酸味がない。リベリカ種は品質が高くなく、全生産量の1%以内を占めるのみである。(今現在これを書きながら僕は人に貰ったGevaliaのコーヒーを飲んでいる。幸福!)
高さ数mにもなる常緑低木或いは小高木で、対生する葉は長卵形(長10cm程度)で光沢がある。葉縁は波打つ。白い五弁花には芳香があり、径2cmほどで基部は約1cmの筒状。花後には赤や紫、時に黄色の石果(径1.5-2cm)をつける。果実は熟するまでに9ヶ月ほどかかる。枝の先端につく実を除いて、果実一つにつき二つの種子が入っている。コーヒー豆はこの種子である。枝端の果実には普通のものより小さくて丸い実が一つだけ入っている。これは普通のコーヒー豆とは分けられて売られるかまたは捨てられる。果肉は甘く食べることができ、ジャム等が作られる。
アラビカ種は観葉植物としても栽培されており、簡単に手に入る。夏は直射日光を避け、冬は低温に弱いために室内で育てる。播種或いは挿し木で増やすことができる。
coffea_liberica種子、果肉、葉にカフェイン(Caffeine)等を含む。最も含有量が高いのは種子で、しかしカフェインをほとんど含まない種も存在する(C. eugenioides等)。カフェインはキサンチンアルカロイドの一種(キサンチンはプリン塩基のひとつ)で、化学式はC8H10N4O2。白色・無臭の針状或いは六角柱状結晶で、味は苦く昇華性がある。水には少し溶け、クロロホルム、エタノール等に可溶。茶の葉に含まれるテイン(Theine)は実はカフェインの別名というだけである。カフェインは摂取後45分以内に胃と小腸で完全に吸収され、肝臓で酵素により代謝されて84%がパラキサンチン、12%がテオブロミン、残りの4%がテオフィリンに分解される。テインはタンニンと結合するため、作用はコーヒーのものほど強くはない。
中枢神経系、心臓(→心筋収縮力増加)、腎臓(腎血管拡張→利尿)、肺等に対して作用する。アデノシン受容体に拮抗するため覚醒作用を持ち、少量では集中力を高めたり倦怠感をなくしたりするが、多量に摂取すると不眠の原因となる。LD50は150-200mg/kg(幅があるのは年齢・肝機能・モノアミン酸化酵素の量等に左右されるため)で、薬事法では一回あたり500mg以上のカフェインを含む薬剤を劇薬に指定している。選択毒性があり、ヒト以外の哺乳類に対する毒性は極めて高い。哺乳類のみならず無脊椎動物にも作用する。カフェインを摂ったクモにめちゃくちゃな巣を張らせる実験はかなり有名だろう。
caffeineカフェイン中毒は急性と慢性に分けられ、急性中毒は1時間以内に17mg/kg以上のカフェインを摂取した場合に100%発生する(6.5mg/kg以上なら50%の発症率)。量が多ければ多いほど重症になる確率も高いが、後遺症を来すことはない。DSM-IV-TRにもちゃんと"カフェイン中毒"の項がある(305.90)。精神症状としては緊張感、知覚過敏、不安等が見られ、重症では精神錯乱、妄想、幻覚、自殺衝動までもが現れる。症状から見ても推測できるように、鬱病やパニック障害を患っている場合には更に重症化しやすい。身体症状では吐き気・嘔吐、胃痛、動悸、振戦、瞳孔散大等があり、重症の場合は痙攣を起こすこともある。しかし放っておけばカフェインは分解されてたいてい尿酸として排出されるので、重篤な事態に陥る可能性はあまりない。慢性症状は長期に渡って多量のカフェイン(目安として500mg/日以上)を摂取し続けるために起こり、肉体依存はないものの弱い精神依存が見られる。禁断症状として偏頭痛や抑鬱が見られる場合もある。
反面、抗癌剤の作用を高めたり、癌に罹るリスクを減らしたりするというメリットも持つ。また、コーヒーの日常的な摂取により心臓病・肝臓病のリスクも減る。といっても、砂糖を毎度たっぷり入れて飲んでいるようならやっぱり健康に害があるのは言う迄もないのだが…。



theobroma_cacao_fruitカカオTheobroma cacaoはアオギリ科カカオ属の常緑高木。樹高は5-10mに達し、排水の良い土壌によく生育する。葉は長楕円形で先尖。花は2cmほどで(果実に較べて)非常に小さく、幹から直接出る。故に上のように、果実も幹から直接ぶら下がる。萼も花弁も5枚ずつあり、萼のほうは淡紅色で花弁はクリーム色をしている。一株に大量の花が咲くが、結実するものはあまりない(全部結実したら樹の見た目が凄いことになりそう)。花は一年中咲く。果実は熟すると赤褐色またはオレンジ色になる。果実(長さ30cm弱)一つにつき数十粒の種子(径2.5cmほど)が入っており、コーヒーとは違って果肉ごと発酵させてココアやチョコレートを作る。種("カカオ豆")のみ乾燥させることもある。果肉や種子にカフェイン、テオブロミンと大量の脂肪を含んでいる。カフェインについては上に説明してある。テオブロミン(Theobromine)は化学式C7H8N4O2のアルカロイドで、テオフィリン(緑茶の苦味成分)とパラキサンチンの異性体である。これら3つはどれもカフェインが体内で分解される時に生成されるが、テオブロミンを直に含有しているのは自然界ではほぼカカオのみだ。ほかには茶、コーラノキ、コーヒーノキ等もテオブロミンを多く含んでいる。theobromine融点は345-350℃で水に不溶、白色または無色の結晶性粉末。肝臓でメチルキサンチンに代謝され、その後また分解されてメチル尿酸となる。
動脈硬化症や狭心症等の循環器疾患に用いられたこともあり、近年は血管拡張剤や中枢神経刺激剤、利尿剤としても使用されている。摂りすぎると嘔吐や下痢、呼吸障害、麻痺を引き起こすこともあるが、チョコレートやココア程度では人間にとって毒になることはない。イヌはテオブロミンの代謝速度が遅いため、数十から数百グラムのチョコレートを摂取すると消化不良や脱水症状を起こす。更には心拍増加、癲癇様の発作が見られ、時には死亡する。また、テオブロミンには細菌に遺伝子変異を起こさせる作用があるが、人間に対してそのような作用はない。
theobroma_cacao_flowertheobroma_cacao_leaf


agave_americana写真はいずれもアオノリュウゼツランAgave americana。これはテキーラではなくプルケという白濁した酒を作るのに用いられる。テキーラと認められるためにはA. tequilanaでしかもWeber blueという変種で、その上生育地まで指定のあるもの(ハリスコ、グアナファート、ナヤリ、ミチョアカン、タマウリパス)が主原料(51%以上)で、それからテキーラ村とその周囲で最低2回以上蒸留されていて、おまけに蒸留所番号が示されていなくてはならない。また、熟成時間が長いほど価格は高くなる。
リュウゼツラン属(Agave)植物から作られる酒としてはほかにメスカルがある。これの主原料にはA. angustifolia, A. esperrima, A. potatorum, A. salmiana, A. weberiが使われている。挙げられた種以外からも酒は作ることができ、種名が酒の名前となって流通していることがある。
テキーラのアルコール度数は45-50度と高いため、直接飲む場合は喉を守るために塩を舐めライムを口に絞りながら飲むべきである。本場メキシコでは、メスカルを飲む時にライムと共にリュウゼツランに棲むボクトウガの幼虫(グサーノと呼ぶ)を粉状に挽いたものと唐辛子を混ぜた塩を肴とする。生のグサーノを入れることもあるが、これは本来アルコール度数を証明するために行われていた慣習であり、今ではもはや話題作りの域だろう。
agave_americana肝腎の(?)植物のほうは、リュウゼツラン科リュウゼツラン属の大型多年草で、英名はCentury plantというが100年も生きることはあまりなく、せいぜい数十年である。名前にランとあるが蘭とは何の関係もなく、ついでに上に書いた酒のメスカルは発音が似ているがペヨーテの幻覚物質メスカリンとも何の関係もない。
茎はなさそうだが実はあり、短くて太い。ロゼットを形成する葉は分厚く、縁に棘を持つ。成長は途方もなく遅く、しかも数十年目で花をやっとつけたかと思うとその年のうちに枯死する。だから花を見ることはほとんどない(という事は一番上の写真を撮れたのはちょっと貴重な体験)。花茎の高さは5mから10mにもなり、先に筒状の花が多数つく。写真を拡大してみれば下のほうに人間がこっそり写っているので、比較してみれば花茎の高さがどんなものか大体見当がつくだろう。斑入りのものはA. americana var. marginata(一般にリュウゼツランというとこれを指す)という変種で、観葉植物として栽培されている。
開花期になると澱粉が糖化し、花茎のほうに転流する。この液体を集めて発酵させるとプルケになる。液を醗酵させて蒸留させたのがメスカル。テキーラのほうは花茎を伸ばす前の植物体から葉を除き、茎を蒸し焼きにして糖化させた後の搾り液を醗酵させて作る。糖液を煮詰めるだけでもシロップになる。
色々と仰々しく書いたが、毒性のほうは結局葉にシュウ酸塩を含むために接触性皮膚炎を引き起こす程度である。それも乾燥させるとそのような作用もなくなる。それどころか含有するフルクタン(Fructan)は糖尿病や骨粗鬆症に有効なのらしい。フルクタンはフルクトースが大量に結合したものの総称なので、別に特定の物質ではない。つまりは糖なのだが、醗酵させると作用はなくなる。だからテキーラやメスカル、プルケを飲んでも糖尿病には効かないが、シロップなら効くのかもしれない。

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クリスマスローズ

クリスマスの花というと僕はどうしてもポインセチアが出てくるのだけれど、クリスマスローズHelleborus nigerも地味に人気なようだ。とはいえ花屋で売られているのはほとんど同属別種のレンテンローズHelleborus orientalisのようである。だから実際クリスマスに咲いている事もあまりない(レンテンローズは早春から春先に花が咲く)。元祖のほう(?)は花色が白しか存在しない。とはいえ、白から紫色に徐々に変化していくのらしい。タイトルこそクリスマスローズと書いてあるが、この写真も実はレンテンローズだ。
helleborus_orientalisキンポウゲ科クリスマスローズ属の多年草。属名の"ヘレボルス"で出回っていることもあるらしい(この属名の原義は「死に至らしめる食べ物」なのだが…)。種名のnigerは黒色の意で、これは根などが真っ黒であることから付けられている。花弁に見える部分は花弁と見せかけておいて実は萼で、そのため結実が始まっても、それどころか種が弾けても"花弁"は落ちずに残っているままであることが多い。花弁は蜜腺として残っており、これが発達している種もある。葉は根生し、掌状複葉で光沢があり、縁には細かい鋸葉を持つ。茎高は80cmほどにもなる。クリスマスローズ属の原種は20-30種ほどあり、有茎種と無茎種に分けられる。園芸植物として人気なため、交雑種はかなり多くが存在する。たとえば下はダブルホワイトと呼ばれる交雑種である(はず)。
helleborus_orientalis-doublewhiteかつて民間療法で下剤・堕胎剤・麻酔・狂気(鬱、ヒステリー等?)の治療[1]等に用いられていたこともあるが、「死に至らしめる食べ物」と呼ばれていたことからしても毒を持っていることは周知のことであった。毒成分は強心配糖体ヘレブリンとキンポウゲ科の有毒植物にならほとんど必ず含まれているプロトアネモニン、そしてラヌンキュリン。プロトアネモニン(別名アネモノール、ラヌンキュロール)は植物体が傷つけられた時などに配糖体であるラヌンキュリンから酵素によって生成される。さらにプロトアネモニンが空気や水に触れると重合して二量体のアネモニンを形成する。アネモニンが加水分解されると無毒なカルボン酸(アネモニン酸というようだが...)になる。そのため、プロトアネモニンを含む植物は乾燥させると毒性が低下する。

ranunculin
↓ ブドウ糖が取れる
protoanemonin
↓ 単量体が二つ重合
anemonin
↓ 加水分解
carboxylic_acid
クリスマスローズの茎等から出る汁液に触れると、プロトアネモニンの作用によって皮膚炎や水疱が引き起こされる。更に植物体を摂取すると、嘔吐に加えてヘレブリンの作用のために不整脈や眩暈が起こり、重症では心臓麻痺に至る。ガリア人はこれを矢毒として用いていた。薬用として使用されていたのはたいがい根の部分で、焼け付くような味のものが最上とされていたそうである。
helleborus_orientalis-1

[1]: 実際に狂気に効果があるというよりは、この植物の持つ催吐作用や下痢を起こさせることから体内を浄化すると考えられていたためである。

追記:クリスマスを満喫する予定のリア充はこれでも食らえ!

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Irony, Satire and Truth

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北落師門

Author:北落師門
特徴: 研究者気質(何)、厭世家、人嫌い、典型的ブックワーム。
大量の学問だけで出来ていると思う。詭弁と皮肉で武装している。
目の悪さが半端ない。あと、電話と食事と世間話が天敵。
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