InAequabilitas

 moneo in reticentia - audi.

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距離

僕はなるべく人と「出会い」たくない。彼らが僕を幻滅させるからだ。
例えば僕は(一方的に)中島義道氏に救われたと思ったり、姜尚中氏に慰められたと思ったりするのだが、どちらにも出会ったことはないし、出会いたくもない。出会わないうちは僕の「良い」表象としての彼らでしかないが、知ってしまえば全ては汚辱の表象としての世界の中に墜ちてしまう。
「俺が思うには、身近な者ほど愛するのは不可能なのであって、愛し得るのは遠い者だけだ」。
『カラマーゾフの兄弟』中のイヴァンの台詞。頷かざるを得ない。
誰もが無形の剃刀を振り回している。遠いところにいる者には当然その刃は触れない。最も傷を負わせているのは、隣にいて「一番大事」もしくは「最も親しい」と錯覚している対象に他ならないのだ。
この剃刀の存在に気付いている人間にとっては、遠い者しか愛し得ない。

近い者同士ほど互いの皮膚を切り裂き合い、にも関わらず自分は全くの健康体である、と思わせ合ってニコニコしている。何という欺瞞!
それだからいつか互いに、密かに一方的に恨み始めるのだ。我慢が頂点に達すれば、まあ下手すれば殺されるかも判らない。

僕は批判には長く傷つかない。ほとんどは何とも思わないのだが、全く事実に反した批判なんかをされればそれは当然傷つく(笑)。だがそれも長くはない。
意図して僕を攻撃する言葉にもあまり恨みは覚えない。相手には自覚があるからだ。
僕が真に傷付くのは「綺麗事」と「優しい言葉」だ。それらは僕にとってレイアーティーズの毒剣のように感じられるのだが、彼らはまるきり無自覚である。
そう、自覚のない言葉が最も恐ろしいのだ。その上彼らは「良い(または正しい)事をした」「慰めた」と確信して憚らないのだから尚更始末が悪い。
無害そうな言葉の後ろに隠したつもりの「好奇」が透けて見えているのだよ、愚鈍な諸君。見えていないとでも思ったか。その劇毒に気付かないとでも思ったか。

もっとも屈辱的なのは理解されないことではない。好奇と嘲笑を向けられることである。
AはBではないのだから、誰も互いに理解し合えることはない。多分一人の人間が地球だとしたら、他人の理解が届く範囲は多く見積もって大気圏のみくらいであろう。
心理学における、有名な「ジョハリの窓」を思い出して欲しい。とすると言うなれば大気圏は開放領域だ。内核(未知領域)くらいになると、もう自分でも他人でも気付けない。
自分でさえ自分を完全に解ることはないのだから、「あなたのことは完全に理解できる」と神妙な顔で頷く人間は単なる阿呆である。

不理解は表層に引っ掻き傷をつけるか全く何もしないかだけだが、好奇と嘲笑はニュートリノのように、核までも届いてそれ自体は何事もなかったかのように貫通していく。僅かなチェレンコフ光だけがそれらが貫通していった事を告げる。だが何もできない。「幾ら言葉を投げ返しても、貴様を掠めるだけで擦り傷ひとつつけないのは知れている」(『リア王』)。
ただここに蹲ってそれに耐え続けるしかないのか。

怒鳴ってくれれば、殴ってくれればどんなに良かったか。それでも僕は語る事を放棄していたには違いないだろうが、少なくともこの相剋に身を抉られることもなかったはずだったのに。

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Comment

2009.10.21 Wed 19:46  

中島義道か。
あの人の不幸話はすさまじいですね。
慰められます。
  • #DiO0Aag6
  • R.ogawa
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2009.10.21 Wed 22:51  

「幸福論」が氾濫するなかで「不幸論」とか書いてますから…。

僕が救われたと思ったのは「人間嫌いのルール」です。ああ、僕は生きててもいいんだ、と思いましたね。
  • #MF8IyTP2
  • 北落師門
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