InAequabilitas

 moneo in reticentia - audi.

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つるみと自己実現

近頃、佐世保の小学生の殺人事件からやっと問題視されるようになり始めた事なのだが、こう叫ぶ少女たちがいる。
「あいつなんか友達じゃない。付き合うのだって苦しかった」
彼女らが憎々しげに語る『あいつ』なる人物は大抵、周りがその彼女と最も親しい友人であると思い込んでいた人物である。だから世間はあっと驚くわけだが。
彼女らは何とも不思議で、人とつるんでいなければ死ぬほど不安らしいのだ。
知人の娘で現在小6だか中1だかの子がいるのだが、知人が言うには「帰るのが遅い」。別に外で遊びほうけているとかいう話なのではない。彼女は自分のクラブ活動がない日であっても、友人のそれが終るまでずっと待っているのだという。
確かに僕も小学校の頃、「一緒に帰る人がいない」と不安そうな顔をした女子を山のように見た。あれはガキだからそうなのだと思っていたが、どうも違うようである。

トイレで昼食をとる女子大学生・社員が問題になることがある。彼女らは「一緒に食べる人がいない」という事がなんと恥ずかしいそうなのだ。人それぞれの感性があるのだから決して笑いはしないが、少なくとも僕にとって理解は不可能である(まあ彼女たちにとっては、絶対に一人でしか食事をしたくないという僕が理解不能なのだろうが)。
同じように理解できないものとして、女に限ったことでもないが「連れション」なる行為がある。個室に区切られているトイレでさえ、一人で行くのは躊躇われるのか。
物理的な距離が短くなくても、もっと手近に「繋がる」手段として携帯電話が存在する(だから僕はケータイだって嫌いだ)。「ケータイがなかったら死ぬ」と語るド派手な女子高生たちを見ていると、この類の問題をすぐに「現代の病理」という便利でありきたりな言葉に置き換えたがる数々のエッセイストの顔が浮かぶ。
ここまでして「つるんで」いたい心理とは何なのだろうか。

流行とつるみとの関係も密接である。
流行に乗り遅れまいと焦る人々。戦時中の標語「バスに乗り遅れるな」を思い出す。
「風邪の流行には乗りたくないんだな」とかいう古い皮肉を投げつける気もないが、何よりも皮肉なのは流行の只中にいる人々ほど「自分らしさ」に拘っているという事実だ。
高校の経済の教諭が言った印象的な言葉がある。
近頃の女の子ときたら、個性を手に入れようとして流行を追っている」。
流行とは、いわばその時点での多数派である。個性は1つなのだから明らかな少数派だ。
タウンページのCMだった気がするのだが(古着屋のやつ)、そこに出ていた女は自分の服を古着屋に売りたい理由をこう語った。
「街でこれとおんなじの着てるコがいたんで、着られなくなっちゃったんです」
当然その上着は大量生産されている商品で、同じものを着ている人間がいないことを保証するのは完全に不可能である。

流行に乗るという行為は、多数派のなかに身を置くということだ。同じくつるむという行為も多数の中に自分を置くこと。
しかし、それでいて「埋もれて」いたくはない。個でありながら、多の一員であろうとする。
いわゆる「グループ」化したあらゆる年代層のほとんどの女は、グループに属さなければ不安で仕方ないが、グループの中では特別でありたいと願う。ただそのグループの中にいるだけの人という立場でもまた落ち着かないのだ。
一人になるのは怖い。だが、それでも誰かの「特別」でありたい。
自信のなさに悩みながらも、自信を獲得し肯定してもらおうと足掻く人間の姿が浮かび上がる。

多数のときはかなり強気だが、いざ一人で何かを、というときになると途端に自信を喪失し弱気になる人間を多く見た。
もし足場がぐらついたときに立て直してくれる援助者がいなければ、何かをするのは恐ろしいのだ。
自分の意見に頷いてくれる賛同者がいなければ、何かを言うのは恐ろしいのだ。
自ら深く考えて、これが正しいと確信できる思想もない。彼(女)らの態度は臆病と怠慢そのものだが、自覚していないか押し隠しているかのどちらかである。
果たして多数に服従しているままで自信は得られるのか。「あんまり同意できないな」と思いながらもその思想を口にすることでは個性は獲得できないのではないか。
少数になることを恐れずにそのなかに身を投じてこそ、自分自身であることができるはずだ。

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Comment

2009.10.25 Sun 20:52  

多数派でないと不安なのは日本人の国民性、
というのはよく聞きますが、
日本人だけではないのでしょうかね?

2009.10.26 Mon 18:03  

決して日本人だけじゃないと思いますよ。

現在僕は日本国外にいますが、人間の性質は大して変わらないように見えます。しかも周りはかなり色々な国から来た人ばかりです。

国を越えてでもつるんでいたいようで物凄く面白いですよ。基本的には同じ国どうしで固まってますけど。







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北落師門

Author:北落師門
特徴: 研究者気質(何)、厭世家、人嫌い、典型的ブックワーム。
大量の学問だけで出来ていると思う。詭弁と皮肉で武装している。
目の悪さが半端ない。あと、電話と食事と世間話が天敵。
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