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InAequabilitas

 moneo in reticentia - audi.

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閉鎖病棟のリアル(隔離室編)

[一般病床編はこの記事]

この記事では知っているひとみんなが気になる隔離室の事情を書きますよ.隔離室とは,病院によって保護室とも呼ばれることがある,急性期まっさかりの患者であるとか深刻な自殺企図・自傷傾向が認められる患者のための個室である.端的に言って,殺風景.必要最低限のもののほかは何もない.扉には外から鍵が掛けられる.窓の外は基本的に見られない.トイレは自分で流せない.蛍光灯にはたとえ届いたとしても直接触れられないよう覆いがしてある.持ち込み制限はむしろ持ち込めるものを数えた方が早い.というか基本的に「何も持ち込めない」と考えた方がよいのではないか.僕は眼鏡が身体の一部になっているようなド近眼なのだけれど,眼鏡持ち込み禁止と言われた時はさすがに弱りましたね.数日後に主治医が来た時に「頼むから眼鏡だけは」と懇願してやっとOKが出たのだが.食事もろくに見えないのはヤバい.
世間一般には「精神病院=鉄格子」みたいな認識が定着していると思うが,少なくとも僕が入院した2病院は隔離室であっても鉄格子はなかった.もちろん一般病床にはなおさらない.
初入院時の隔離室は普通のベッド(とはいってもいわゆる病院のベッド)だったが,その後3回の入院で世話になっている病院の隔離室のベッドは,床に直置きされた巨大なスポンジベッドみたいなものであった.硬いところがないし,首を吊ろうにも紐などを引っ掛けられる部分もない.徹底的に安全です.
あとはお決まりの監視カメラ.ちゃんと見てるのかよと思うくらい,夜中に不眠でうろうろしていても(※眠剤が欲しい),昼間に不安から同じ場所を何度行き来していても(※頓服が欲しい),全く誰も反応してくれないのであるが,昼間に布団を頭からすっぽり被って存在を消していたら看護師が来て「大丈夫ですか?」と聞いていったので,見ていることは見ているのであろう.眠剤や頓服が欲しいなら察してもらおうとせずに看護師を呼べ,という声が聞こえてきそうだが,この病院のよくわからないのはナースステーションまで自由に歩いていける一般病床にはナースコールがついているのに隔離室にはナースコールがついていないことである.また,扉が厚いので扉を叩いて呼んでもまず聞こえていない.部屋の外を看護師が通りすがるのを見計らって扉を叩くとまあ気付いてくれないこともない,くらいの感じである.因みに初入院の病院の隔離室にはナースコールがついていたので,全ての病院がそうというわけではなさそうだ.
窓から外が見えないというのは,例えば初入院の病院の場合は窓に磨りガラス風のフィルムが貼ってあって見えないとか,2回目以降の病院の場合はそもそも建物の構造的に窓が引っ込んだ位置にあるため障害物だらけで何も見えないとか,色々なパターンがある.外が見える隔離室の病院もあるのかもしれない.この病院には「外界と一部繋がっている隔離室」がひとつあり,そこの窓からは(ほぼ全面向かいの建物の壁だが)空も見えるし天気がわかる.その部屋はトイレを監視カメラから見えなくする仕切りがある上,トイレが自分で流せるので,大変人権が保障されている感じがする.また,許可が出れば日中は病棟内の廊下につながる扉の鍵が開けられ,自由に出入りしてよいこともある.面会の知人に本を差し入れられて持ち込めたのもそこだ.閉鎖病棟の隔離室で中井久夫を読むのはめちゃくちゃエモい.
病状が安定していると判断された患者がそこに入れられる(可能性を持つ)わけだが,僕は見た目たんたんとしているため「安定している」と判断されてそこに移された直後に手首に巻かれていた包帯を使って首を吊ろうとし,あっけなく発見されて未遂に終わった上に身体拘束を食らうことになった.この身体拘束がまた世間一般の「頭の病院」のイメージに合致するもので,四肢と胴をベルトでベッドに固定して身動きが取れなくするアレである.食事とトイレ(しかも自己申告ではない)以外は起きていようが寝ていようが縛られている.寝返りも打てない.身体が痒くなった時に自由に掻けないのはつらかったですね.真の暇というのは何か,身を以て知ることができる.あまりに暇なので毎朝の回診とか体温測定とか薬の時間が心から楽しみになるレベルである.確か1週間くらい拘束は続いたと思う.
隔離室で一番の問題は暇すぎることであるが,次に問題なのは入浴が週2, 3回なことである.夏に入院したひと,メッチャつらそう.隔離室にいると「シャワー浴びたい」がメインの感情になってくるので,その点では患者を落ち着かせるのに成功しているのかもしれない.一度だけ例外的にシャワーの日でないがシャワーが許可されたときがあって,それは脳波を取る際に電極をつけるためのクリームで髪の毛がベタベタになっていたときであった.
良い点といえば隔離室のシャワーは大浴場でないことである.見たくもない他人の裸を強制的に見せられることもなければ,「お前のシャワーの水がかかる!」と因縁をつけられることもない.因みにシャワー中ずっと看護師が扉の外で待っていて,時間が少しかかると外から「大丈夫ですか?」と聞かれる.
病棟の洗濯機と乾燥機は使えないので,洗濯物は面会に来たひとに託すほかない.また持ち込みの服は着られないので隔離室の患者は全員病衣である.おやつタイムはちゃっかりある.面会に来るひとにおやつを差し入れてもらうとそれが中央管理となり,毎日のおやつタイムにランダムでどれか2つ程度が持ってこられる.そういえば初入院の病院,おやつタイムとかなかった気がする.
点灯・消灯・食事の時間のスケジュールは一般病床と同じ,食事も同じ.ただ時計がないので時間感覚が失われやすい.カレンダーはあるが,「今日」がいつなのかそのうちわからなくなる.
さすが隔離室という感じで,隣人はみな個性的.黙って希死念慮と幻聴に悩んでいる僕が一番まともそうに見える(自己採点).歌うたうひとあれば,昼夜問わず延々とドアを全力で叩き続けるひと,自分は神だと主張するひと,ブツブツと何やらを唱え続けるひと,実に人間多様である.今回の入院では隔離室行きにならなかったのだが(拍手),隔離室から時折叫び声が聞こえてくるので,様々なひとが様々な症状に悩まされていることがよくわかる.昼夜問わずドアを叩き続けるひとが一番印象に残っているのだが,彼(彼女?)のために僕の安眠は犠牲になったのであった.回診に来た医師が「いやあ〜賑やかですみませんねえ」と言った時に「賑やか…」と思わず脱力したくらいには,犠牲になった安眠の亡霊が僕に取り憑いていた.合掌.
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