InAequabilitas

 moneo in reticentia - audi.

CURRENT MOON

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断片

毎朝、嫌な夢から目を醒ます。どんな夢かは全く覚えていない。夢の湿気だけを引き摺って一日が始まる。生まれてこのかた、朝が好きだったためしなど一度たりともない。
かつて住んでいた街がすっかり変わってしまったと信じていたのに、本当は何も変わっていないことに気付いたときのむず痒い違和感。凍結する気配さえない道路の脇に「路面凍結に注意」という看板があって、それがどうしようもなく可笑しくてにやにや笑いを浮かべながら家路につくこと。「ヨーロッパ」という字面と響きが突如として奇妙なものに感じられ、単語の意味は恐ろしいほど正確に認識しつつも"ヨーロッパ"という実在から単語が遊離していくのを見ているようなもどかしさ。
ホームに電車が滑り込んでくるとき、高所から真下を見下ろすとき、その先へ向かって飛び込んでゆきたくなる衝動に駆られる。死にたいのではなく、ただそこへ吸い込まれていくという錯覚が幼少の頃からある。今いる場所に立ち続けるのは励起状態にある電子のようでどこかしら収まりが悪い。きっと重力に任せて落ちていくのは清々しいだろうと考えてみる。
毎朝ホームで列車を待ちながら、執拗に脳内シミュレーションを行っている。…列車が来た! ホーム端の青色照明を横目で見る。5m程度に列車が近付いた時を見計らい、僕は電車待ちの列を飛び出して線路に身を投げる。非常停止ボタンが押される。車両の頭はもう血糊でぐっしょりと汚れている。肉塊、骨片、血飛沫。列車は何時間も止まり、沿線の列車も止まり、通勤客と死体回収にあたる作業員と警官、何十万もの人に呪詛されて僕は死んでいる。…それでも現在に至るまで何も起こらなかったし、恐らくこれからも起こることはないけれど。
身体と周囲との境界線が融解しているような感覚。多分、自己の輪郭などいつだって曖昧なものなのだ。ぼんやりと"その辺り"では"自己"の密度が高く、他所では低いというだけで、その自己-他者或いは自身-環境という連続スペクトルにどんな区切りを与えるかということだけが問題なのかもしれない。志向性が存在すれば、ふたつの事物は明瞭な境界を失い、グラデーションを描く。そこに境界線を見出すのはマッハ・バンドの錯視みたいなものなのだろう……仮説とさえ呼べない思い付きだが、もう少し突き詰めれば形にはなるかもしれない。
毒にも薬にもならない思考ばかりが頭の中をのたうち回っては消えていくことを繰り返している。自身が発した問いから、「だから何なの?バカなの?死ぬの?」という嘲りだけが僕に回帰する。常に思考してはいる。だがそれは何らの結論も与えない。
何故だ。何も考えられない。

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Comment

2012.12.08 Sat 20:20  

おなじような経験、思いを体験する人もいるんだ・・・と苦笑しました。まったく脈絡がない言葉が浮かんでくることがありますよね。

私の父は戦時中、日本海軍の空母「赤城」に乗り組んでおりました。復員後、戦後父の口から戦争体験を聞かされることは全くありませんでした。ただ一度戦記物を読んでいてこっぴどく叱られたことを思い出します。人間は死ななければならないときは自らの意志に沿わなくても死ななければならないわけで、生かされている自分が、生きている限り命は大切にしなければいけないというのが父の教えであったように思います。

あなたが本当に電車に飛び込みたくなったら迷わず精神科の診察を受けるよう切望します。これは嫌みなどではありません。まじめにそう思っております。
  • #bBmFigmc
  • ketsuro8da
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2012.12.09 Sun 13:45  

赤城とはまた凄い...ミッドウェー海戦に出撃した空母ですよね。
きっと自殺せずにはいられないときというのも、死ななければならない時というものではないかと思っています。だから他殺や事故死であろうとも"無念の死"はないのかもなあと。
生まれたことも、自らの意志に沿わないで生まれさせられたわけであるし。

飛び込みたいというよりは、(勝手に)飛び込みそうという感じなので(?)なんとも言えないのではあるのですが、今のところもこれからも何も起こっていないので多分大丈夫です(笑)。
  • #MF8IyTP2
  • 北落師門
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2012.12.09 Sun 20:38  

実は「赤城」はミッドウェー海戦で唯一米軍の攻撃で撃沈されなかった空母でした。しかし損傷が激しく自力航行が不可能だったため、日本海軍が自らの魚雷で沈めました。

昨日カキコミ中、NHKで戦艦大和の生き残り乗組員の戦後を描く特集をやっていて、とても複雑な想いで見ておりました。生き残った人間の居心地の悪さを父の戦後とダブらせて感じたひとときでした。
中村天風によると人の人生というものはその人が思い描いているとおりになる、従っていつも積極的思考で進んで行けばおのずと運命は開けてくるとのことです。北落師門さんは賛成されないかも知れませんが、私はその考えに惹かれます。
ただ10人中1人しか生き残らないという戦場の極限状況の中で、生きるか死ぬかの運命の違いって一体何なのでしょうね?
  • #bBmFigmc
  • ketsuro8da
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2012.12.10 Mon 22:34  

僕としては、すべてなるようにしかならないだろうと思っていて、何が起こっても「そういうもんかなあ」と諦観しています。やる気を出してうまく行ってもまあそんなものだし、うまく行かなくてもそんなもんだろうという(ある意味無気力)。
不条理な状況も、やっぱり何の理由もないでしょう。そこに理由をつけてみたくなるのは、何も無いとどこか不安だからだと考えています。
  • #MF8IyTP2
  • 北落師門
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2012.12.11 Tue 12:43  

以前似たような状態だった頃があるのですが、その頃「逆恨みされている」のを自覚してました。他人から粘着に憎悪を向けられると、それが理不尽な逆恨みであっても、「自殺衝動へと釣られそうになるイメージ」が起こるような気がします。
そういうものを振り払うつもりで、「動物が水を振り払う時のしぐさ」に似たしぐさをすることがあります。
  • #QMnOeBKU
  • まめつぶ
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2012.12.11 Tue 19:27  

逆恨みですか...僕も知らず知らずのうちに他人に恨まれていると思います(無自覚に無神経だったりするので)。
でも今のところ自覚はなく、恨まれていると解ってもまさに"そういうもんかなあ"といったくらいの感慨しかないですね(笑)。

これが自殺衝動かどうかすら判然としないこともあります。第一にあるのは「死にたい」でなく「落ちる?」というような、ぼやっとした意識です。きっと意志も発動していません。
ひょっとしたらラッシュ時に線路に飛び込むサラリーマンも、死の直前はこんな精神状態なのかもしれない。と考えてみたりもします。
  • #MF8IyTP2
  • 北落師門
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北落師門

Author:北落師門
特徴: 研究者気質(何)、厭世家、人嫌い、典型的ブックワーム。
大量の学問だけで出来ていると思う。詭弁と皮肉で武装している。
目の悪さが半端ない。あと、電話と食事と世間話が天敵。
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