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面白い構造式を集めてみた

A: C60フラーレン
buckyball面白い構造の元祖はやっぱりこれである気がする。この構造モデルが提唱された時、あまりにも変な形であるためにこんなのあるわけないだろと一笑に付された過去を持つ。5員環(五角形)が12、6員環(六角形)が20で構成されており、これがサッカーボールに喩えられる要因である。内部に金属などを抱き込んだ内包フラーレンというものもあり、内包できる金属には選択性がある(ScやTiなどはあるが、FeやAlはないのらしい)。ところでフラーレンをC60のことだと思っている人が多いようだが、フラーレンは炭素同素体の1カテゴリーで、C60(バッキーボール)の他にC70、C74などもあり、話題の(?)カーボンナノチューブもフラーレンとされることがある。孤立5員環則(IPR)によりC60は最小のフラーレンとされるが、人口合成された最小のフラーレンはC20のようだ。ただこれはIPRを満たさず5員環12個のみで構成されているため、非常に不安定で長時間存在し得ない。ところでオイラーの多面体定理のために5員環の数は常に12というルールもある。



B: ナノプシャン
nanokidこの記事を書こうと思い立った切っ掛けがこれ。むしろ初めて遭遇したのはナノバレエダンサーで、その華麗な舞姿に爆笑してしまった。そしてあまりにインパクトが深過ぎるので色々な人に見せびらかして回った(笑)。反応:「ちょw人wwwしかも踊っとるwwwこんな分子マジであるのかよwwwwww」
それがあるんだな。nanoballetdancer
で、ナノバレエダンサーとはこういう奴ら(右)。
中学のときにリモネンの構造式を見て級友と"人間すぎる"と笑っていた記憶があるが、ナノプシャンの前にリモネンはやはり一般人、いや一般分子となった。原型であるナノキッド(上)をIUPAC名で呼んでみると"2-(2,5-bis(3,3-dimethylbut-1ynyl)-4-(2-(3,5-di(pent-1-ynyl)phenyl)ethynyl)phenyl)-1,3-dioxolaneである。舌を噛むなという方が無理。
元の論文はこれ (Synthesis of Anthropomorphic Molecules: The Nanoputians)で、論文中では二量体やポリマーなどの合成にも触れられている。もちろん手と手を取り合った和気藹々なナノプシャンたちである。
左が二量体、右がポリマー。
nanoputian-dimer nanoputian-polymer
nanoputiansまた、頭部のアセタール構造を変換して得られた色々な職業のナノプシャンもいる。ここにはいないが王様もいるんだそうである。個人的にツボなのがテキサス人とシェフなのだが、学者先生の帽子についているウネウネも気になる。これからシェフの帽子を見る度にフェニルを連想しそうだ…。
因みにナノプシャンの身長はその名の通り2nm程度である。何の役に立つわけでもないらしいが、子供のナノテクノロジーに対する興味をかき立てるということで化学教育プロジェクトの一環として認められており、ライス大学内にHPもある(Welcome to Nanokids)。科学者は頭が固いとか思い込んでいる奴は有機化学勉強して出直して来やがれ!

おまけ: 構造がサッカーボールなだけにC60で遊ぶナノキッド、ツアー教授が作成したわけではないが誰かが勢い余って考えてしまったナノヒッピー。それからNanoputianとNanoputinの綴りが似ているのは理解してやるが、とりあえずナノプーチン考えた奴出てこいwww
nanokid-soccer nanohippie nanoputin

B': ナノカー
nanocarナノプシャンを合成したツアー教授のグループはその後ナノカーという車型分子も合成している。"タイヤ"はC60フラーレン(!)或いはp-カルボラン(C2B10)であり、横には動かしづらいが縦には動かしやすいため、ちゃんと本物のタイヤのように転がっていると言える。その上、分子モーターを取り付ける事によって、光エネルギーを受けて自力で走行するナノカーも作成されている。何でも光のエネルギーで二重結合の一本が切れて回転する事によるものなのだそうな。こちらではC60フラーレンを使うとこの方が光エネルギーを吸収してしまうため、カルボランをタイヤとして用いる。
この他にも6輪ナノカーや荷物を載せられるナノトラック、更にはニョロニョロと這って進むナノワームがある。ナノワームが這う仕組みは光を当てる事によって、中央のジアゾ結合がトランスからシスに変換されることを利用しているのだそうだ。ナノドッグとかナノフィッシュがあってもいいんではないかと思う(笑)。



C: ペンギノン
penguinoneナノドッグとかあればいいんじゃないかと言ったところで、そういえばナノペンギンが存在する事を思い起こす。ナノプシャンと人間の相似度に比べたらペンギノンとペンギンの相似度は低めだが、眺めれば眺めるほどペンギンに見えてくる気がする。認知バイアス?




D: ラダーラン
ladderane
英語ではLadderane。正に梯子なアルカン。この4員環であるが、結合角が90°と小さい(sp3混成軌道でも最小104°くらい)ために反応性が高く、ひずみのため非常に合成しにくい。でも高校化学では何だか当り前のようにシクロプロパン(3員環)やシクロブタンが問題に出てきた覚えが…。因みにペニシリンは構造中にシクロブタンではないもののβラクタム環を含み、ペニシリンの薬効はこの大きなひずみに起因する。



E: ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン
HNIW名前からして凄まじい。英語もそらで正しく綴れる気がしない(Hexanitrohexaazaisowurtzitane)。そんなわけでHNIWという略称が用意されている。TNT換算190%の高性能爆薬であり、現在量産されている爆薬の中では最大の威力を持つ(ε型結晶)。爆速は9000m/sを超える。

octanitrocubane理論上最強の爆薬はオクタニトロキュバンだ。HNIWはニトロ基を6個含み、それでも十分多いというのにこちらには8個もある。爆速は10000m/s超と爆薬好きの憧れの的(?)であるが、製造コストが非常に高くつき、純金並みのグラム単価となるために実用化や量産はなされていない。

それにしても高性能爆薬には変な構造のものが多い。HMTD然り、TATP然り、HMX然り。変な構造だからひずみなどのエネルギーが高く、だからこそ爆薬になり得るわけなのだが。「構造のひずみ=反応性が高い」がいまいちよく理解できない人は、実際に分子模型を作ってみればそれを身をもって実感できるはず。

E': キュバンポリマー
cubane-polymerキュバン単体でも十分面白い構造をしていると言えるが、これがずらっと重合すると更に変な容姿になる。キュバンポリマーはかなり強靭な繊維として応用できる。またフェニル+キュバンという構造の抗癌剤もあるらしい。




F: ヘリセン
helicaneベンゼン環を螺旋状に繋げていったもの。一周して端を閉じてしまえばコランニュレン(ベンゼン5個)やコロネン(6個)などができる。ヘリセンが面白いのは、不斉炭素がないのに光学異性体を持つ事である。これは分子の混み具合に起因するもので、通常各々の光学異性体は左手型・右手型などと区別されるが、ヘリセンでは左回りと右回りとして区別されるようだ。

因みにこういうのもある。
helicane1 helicane2


G: ポルフィリン
hemeB chlorophyll
人体の血液中のヘム(左、ヘムB)や植物の葉緑体のクロロフィル(葉緑素、右)はどれもポルフィリンである。クロロフィルの構造式をよく見ると左下がC20H39と省略されているのが判るが、これはフィトールから来ているため全部展開して構造式を書くと凧のような格好になって実に愉快である。
クロロフィルが光合成に役立つのは、光を吸収する事によって励起電子を放出し、これがプロトンポンプに受け渡されたりNADPH生成に寄与したりすることによるものなんだそうだが、生物学に全く疎い僕はちょっと何だか判らない(苦笑)。但し植物が水を必要とする理由が、水を酸化して酸素に変換する事で放出した励起電子を補充するためというのはよく判った。ここは化学!



H: クエン酸コバルトキュバン重合体
co-citrate-cubane-polymerこんな構造式を書かされた暁には化学が厭になる事請け合いである。この錯塩、右部分の複雑な立方構造だけでも十分迫力があるというのに、二次元方向(上下左右)に広がるポリマーだというのだから尚更凄い。IUPAC名だとpoly[dicaesium(I) hexaaquacobalt(II) [octaaquatetra-μ-citrato-hexacobalt(II)] dodecahydrate]といい、化学式は{Cs2[Co(H2O)6][Co6(C6H4O7)4(H2O)8]·12H2O}nである。100K(-173℃)の温度下で形成されたというので、人工繊維などへの応用もできなさそうだ。何だかクラクラする。

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2012.11.03 Sat 04:19  

めちゃくちゃ面白かったですヾ(≧∇≦)
  • #3un.pJ2M
  • coco
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2012.11.03 Sat 17:17  

ありがとうございます。
物心ついたときから構造式の造形が好きだったもので(笑)
  • #MF8IyTP2
  • 北落師門
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2017.01.11 Wed 22:46  承認待ちコメント

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