InAequabilitas

Date : 2011年11月21日

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未来はない?

中島義道氏は著書の中で頻繁に「未来はない」と書いている。『時間を哲学する』(講談社現代新書)では一章を割いてそれを説明しているし、『やっぱり、人はわかりあえない』(PHP新書)においては小浜逸郎氏との第6書簡でこの問題を取り上げて議論している。僕はだいたい中島氏の考え方に賛同しているが、何だか初めて読んだときから引っ掛かるものがあるなあと感じていたので、今日思い出した折によく考えてみた。
ところで僕の考えを書く前に、まず問題の説明を。「未来はない」と言うと十中八九「そんな悲観的になってどうするの」なぞという的外れな応答が返ってくるが、自暴自棄になって「こんな駄目な俺に将来があるわけがない!」とか言っているのとはそもそも話が違う。主題は人生計画ではなく哲学である。人生計画は"一応"未来があると仮定した上で「これからどうする?」という問題だが、一方こちらの関心はその"一応"を取り去った上で果たして「未来」なるものは現在あるのかということにある。

結論から入るが、結局未来はないのだろうか?僕はあるのではないがないのでもないと言おう。何故か?それは何よりも初めに「未来」の定義が曖昧であるからだ。
上述の『やっぱり、人はわかりあえない』でもこの問題は顕著である。中島氏は具体的なもの(事柄)として未来を捉えている。たとえば彼のいう未来とは「日曜日に高尾山にピクニックに行くこと」や「日航機が墜落すること」である。対して小浜氏は未来を観念として、たとえば神の存在と同じように捉えている。中島氏は「明日は晴れるから高尾山に行く」というのを"未来にこうなるであろうと現在思っていること"と見なすが、小浜氏にとってそれは未来の"概念"を理解している事に他ならないから、つまり未来は(概念・観念として)存在しているのである。これこそ彼らが「わかりあえない」理由なのだ。甲と乙が「佐藤」という人間について話しているとき、甲が「佐藤栄作」を想定しているのに乙が「佐藤愛子」を想定していたら話が通じないのは当然である。どちらにとっても相手が訳の解らない事を喚いているようにしか見えないのだから。

しかしそれ故にあるのでもないのでもないとすぐ結論づけるわけにはいかない。どういうわけでそう言うのかというと、解り易く表現できる気がしないので比喩を使って説明してみる。論点のすり替えとか言わない!(苦笑)。
たとえば未来を胎児であるとする。妊娠していない現時点においては胎児は"ない"。だが現在もう既に胎児を構成する(であろう)素粒子は宇宙のどこかに散らばっている。無作為に素粒子を選び出した所で、(x単位時間後に)それが胎児になるか衣服になるかは知る由もない。つまり未来の要素は常に存在しているのである()。ただ、「要素があるんだから未来はある」というのはどうなのか。これは定義しなおす外にない。
中島氏は「今日子供が誘拐される事を知っていたら、朝子供を学校に送り出したりするわけがない」という例を挙げている。要するに、子供が誘拐されるという未来は「朝子供を学校に送り出した」ときを"現在"に据えた時点では存在していないというのだ。僕が何となく同意しながらもいつも引っ掛かっていたのはここであった。これでは「未来を予知する事はできない」という論証にはなっても「未来はない」という論証にはならない。
とはいえ、やはりどちらかといえば「未来はない」というのに近いのではないか。今手元に単体のナトリウムと塩素ガスがあったとして、それを「ここに食塩がある」と宣う御仁はいないであろう。結局のところ、あるのはただナトリウムと塩素ガスに過ぎない。食塩は今現在どこにもないのである。


: これは過去の存在問題にも応用できる。過去にある故人を形作っていた素粒子は今も宇宙のどこかに存在している。しかしかつて生きていたその人物という単位としては存在していない。

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Irony, Satire and Truth

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北落師門

Author:北落師門
特徴: 研究者気質(何)、厭世家、人嫌い、典型的ブックワーム。
大量の学問だけで出来ていると思う。詭弁と皮肉で武装している。
目の悪さが半端ない。あと、電話と食事と世間話が天敵。
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