InAequabilitas

Date : 2011年07月24日

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"鬱病"の実態

擬態鬱病、新型鬱病、プチ鬱病、とまあ鬱病に「新しい」型が大量に発生している。時折DSMの大鬱病の診断基準に当てはまらないのもあるがとりあえず鬱病でくくられている…って、当てはまらなかったら鬱病じゃないだろ!
なぜこのような鬱病が増えるのか?主な原因は二つに分けられるだろう。一つ目は鬱病という疾患への認知度の上昇、そして二つ目は所謂「処方箋精神医学」というやつである。

今や「鬱病は心の風邪」というフレーズはほぼ誰もが知っている。そして鬱病が大抵どのような症状を呈するかもかなり広く知れ渡っていると言えよう。特にDSMが刊行されてから、漠然としていた精神疾患の診断が飛躍的に容易になった。大きな書店に行けばDSMそのものが置いてあるし、そうでなくともネット上に幾らでも転載されている。
一昔前までは明らかに状態がおかしくとも精神科にかかることが躊躇われたものが、今では精神科が"お悩み相談室"と化していることも少なくないようである。特にセロトニントランスポーター遺伝子が多いらしい日本人の鬱病の発症率は高いと考えられ(?)、大々的に鬱病認知のキャンペーンが行われたわけで、結果として精神科の受診者数は増えた。
ところが医者はそんなに増えないという落とし穴がある。精神科医師一人当たりの患者数は40人と言われている。他の科は16人というところでこの人数である。精神科医は増加した受診者数を処理し切るべく、一人当たりの平均診療時間を10分強に短縮せざるを得なくなる。心の風邪とはいえ、風邪ほど一筋縄ではいかないものだ。しかしぞろぞろとやってくる来診者を放っておくわけにもやはり行かない。そこでどうするか。とりあえず薬を出しておく。処方箋精神医学の誕生である。

また「シュガー社員」という言葉に代表される、だらけた若者の増加も一役買っていると指摘しておこう。新社員にいきなり重役の地位を与える会社(いきなり重役の地位を与えられる新社員)はごくごく稀なもの。入社してから(バイトにとられてから)暫くは掃除、コピーなどの雑用みたいな仕事を回されるのが普通だ。ところが自信過剰なシュガーは「自分はこんなことをするためにここにいるんじゃない!」というような不満を抱く。当然割り当てられた仕事はやりたがらない。嫌な事ばかり強要されていたら職場が嫌になるのは言うまでもない。職場にいると苛つく。辞めない場合はそれが長引く。そうすると本人或いは過保護な親が「ちょっと病院行ってきた方が…」となるという筋書きだ。
病院に行ってみると処方箋精神科医が診療してくれる。シュガーは診断書を出せとか何とか喚いて面倒なのでとりあえず薬と、それから無難そうな「鬱病」の診断書をくれる。翌日シュガーは誇らしげに薬または診断書を振りかざし、「私は鬱病なのよ!優しくしなさい!」と吹聴して回る。何だか面倒そうな仕事を分配されると「鬱病なので療養してきます。有給で」。ミスを指摘したり能率の低さを叱責すると「鬱病なんですよ!もういい死にます!」とか捨て台詞を吐き、唖然としている同僚を尻目に職場から出て行く。(で死ぬはずが、向かう先はゲーセンとかだったりする。)
彼らのつける「闘病記」なるブログを読んでみると鬱病でない事は一目瞭然だ。職場にいなければ常人以上にエネルギッシュであり、かつやたらと他罰的でそうやって人に突っかかる時もまたエネルギッシュである。鬱病らしい"しおれた感じ"がかけらほども感じられない。誰の目にも「甘え」に過ぎない事は明らかだろう。そして社会には「鬱病は甘え」という二次的な認識が広まる事となる。
ところが、本物の鬱病者というのは元来生真面目で、責任感の強い性格である事が多い。彼らは「甘え」と見なされるのが嫌なばかりに、必要なのにもかかわらず精神科を受診しないということになってしまう。本当に治療を必要としている者が治療を受けていない、いや受けられなくなっているのだ。これが最大の問題と言える。

鬱病を正しく認識する事が重要なのは勿論の事。しかしだからといって、似非鬱病が跋扈する原因となっている処方箋精神医はそうやすやすと片付けられない。医者の数は増やそうと思っていきなり増やせるものではない。また「テキトーな相談の人は来ないでください」と病院に張り紙をするわけにも行かない。"テキトーな相談"に見えて実は重篤な疾患の前兆なんていうことはざらにあるのだ。更に、DSMを暗記したからといって疾患に対して正しい認識が持てているかというと、それもやはりそうではないはずだ。どうすればいいのか。ただ長い目で見ておくしか出来ないのだろう。

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Irony, Satire and Truth

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北落師門

Author:北落師門
特徴: 研究者気質(何)、厭世家、人嫌い、典型的ブックワーム。
大量の学問だけで出来ていると思う。詭弁と皮肉で武装している。
目の悪さが半端ない。あと、電話と食事と世間話が天敵。
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