InAequabilitas

Date : 2010年09月11日

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不毛な議論

僕がとても小さかった時の話。小さいといってもベートーヴェンの悲愴を弾いていたわけだから赤ん坊ではない。曲を弾くにはまず譜読み(ある先生は「んなもん譜読みじゃない!音取りだ!」と喚いたが)し、それからミスがないかどうか点検するためその曲のCDを聴く。

その日はたまたまどこかの調節ボタンが押されてしまっていたらしく、全ての音が一度上がっていた。問題は、僕を除いて家の中の誰一人として絶対音感のある人間がいなかったこと、そして僕自身が絶対音感というものを知らなかったことである。

(それから2年ほど経って、同級生が音楽の時間に偶然<発見>した。ずっと音を判別出来るのは当然だと思っていた僕は非常に驚いたものだ。考えてみれば、発車サイン音はおろか鳥の声やクラクション、レジの音や風の音まで楽譜に表せてしまうのは確かに変かも知れない。)

僕は「コンポが壊れている」と主張するが、誰も真に受けてくれない。僕が大人達を困らせようと我儘(?)を言っているという理解なので、いくら「これじゃ確認できないじゃないか」と押そうが、当惑するか笑うか逆に怒り出すくらいしか反応がなかった。そのうえ悲しいことにその機械以外にCDを再生できる機械が当時家になかったのである。

かなり経って(1年ほど前)やっと彼らは絶対音感・相対音感なるものの概念を理解した。このことを思い出した折、案の定「こっちの責任じゃない!お前が変人なんじゃないか!」と責められたのだが(笑)。

それで実感したのが、<通じない奴には言っても無駄>という当り前のような教訓である。当時においては僕も彼らも「間違って」はいない。なぜなら絶対音感のある者から言えばC mollがD mollになってしまうのは確かに故障に他ならないが、相対音感者からすればC mollがD mollになろうと、それどころかG mollになっても同じ音楽なのだから、故障なんかしちゃいないという。

喩えて言えば、日本語しか分からない日本人が、英語しか分からないイギリス人に向かって、日本語で苦情を延々と述べ立てているようなものだ。大袈裟に言えば<世界が違う>のである。もはや相手が何かを苦痛に思っているという事実さえ伝わるか危ういとは何と不毛なことか!

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伺晨

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Irony, Satire and Truth

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北落師門

Author:北落師門
特徴: 研究者気質(何)、厭世家、人嫌い、典型的ブックワーム。
大量の学問だけで出来ていると思う。詭弁と皮肉で武装している。
目の悪さが半端ない。あと、電話と食事と世間話が天敵。
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