InAequabilitas

Date : 2009年08月20日

CURRENT MOON

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美人と裁判

アメリカの某大学で行われたとある模擬裁判の話。

全く同じ強盗の容疑をかけられている2人の女性の写真を陪審員に見せる。片方は美人、もう片方はブスである。
結果、求刑された懲役刑は美人が平均2.8年、ブスが5.2年だった。
「やっぱり美人が得」と思うのだが、次に容疑を詐欺に変えて同じ実験を行ったところ、逆の結果が出た。
美人が平均5.5年、ブスが平均4.4年だったのである。「美貌を武器に人を欺いたのでは」と思われたのらしい。
両方とも公訴事実は全く同じにも関わらず、だ。それ程に人は見た目に左右されやすい事が判る。

1984年2月27日の西ドイツ。メンヘングラートの公園で男のバラバラ死体がビニール袋に詰められた状態で発見された。
死体の一部は火で炙られたりされていた為、カニバリズムとの関連が疑われる。警察は1980年に事故死した少女を食った疑いで7年の刑を宣告され、3年で釈放されたクロンに疑いをかけた。だが結局、犯人は彼ではない事が判明。特定された被害者の身元をもとに捜査を開始した。
被害者、ハンス・ヴィルツは美容師だったが、数日店には姿を見せなかったと店主が言う。どこかもっと給料のいい店を見つけたのだろう、くらいにしか思っていなかった。店主が連絡をとろうと電話をした先は彼が部屋を借りていた家である。大家は夫と別居中で2人の子供と暮らしている女性だという。
警察は当然そこへ聞き込みに行く。家の主、マルティナ・ティンメルマン(28歳)は「ヴィルツさんを知っていますか」と訊かれて答えた。
「知っております。部屋を借りていらっしゃいました。ですが1ヶ月ほど前に出て行かれてからはお会いしていません」
だが転居届は出ていない。ヴィルツが無許可で出て行ったか、ティンメルマンが嘘をついているかである。
警察はもっと詳しく彼女に話を聞くことにした。ティンメルマンは愛想よく捜査官たちを居間に迎え入れたが、彼女の非常な美貌からは想像できない居間の現実の光景に彼らは絶句した。
壁や床を巨大な蜘蛛や蛇が這い回っている。蜥蜴や鼠の入った檻がある。キッチンの流しの所には切り刻まれたペットの血塗れの残骸が置いてある。子供たちに食べさせるために切り分けたと彼女は言う。本棚にはオカルト系の書籍が並び、ビデオはホラーとポルノばかり。壁には大きなホラー映画のポスターが貼り付けられている。夫人は「動物好きなんです」と言って笑うが、明らかに普通でない。何とかまともなのは数匹のハムスターだけだったが、それはペットでなく蜘蛛や蛇の餌であった事がその後に判明した。
そして捜査官は冷蔵庫の中に、ペットの肉とともに保存されていた人間の身体の一部を発見する。かくして、マルティナ・ティンメルマン逮捕。別居中の夫、ウィルヘルムにも疑いがかけられた。
彼は切断用の電動鋸を貸し与えた事と遺体の運搬を手伝った事は認めたが、殺害には関与していないと主張。また、つい最近までマルティナの家に出入りするヴィルツと思われる男が目撃されていた。
夫の自供と十分すぎる証拠に屈し、彼女はとうとう自供を始めた。殺害行為と損壊は認めたが、それは「殺したのではない」と言う。「別の世界へ送り込む手助けをしただけです」。何の戯言を、と一蹴されそうなものだが、マルティナはそれに固執し続けた。
「彼と私は愛し合っていましたが、子供たちの手前、関係を続けてはいけないと思いました。ですが彼は私なしでは生きていけない、殺してくれと頼むので、そうしてやったのみです。
彼は情事のとき、風呂に入り、顔を水に沈め、手に林檎を握りながらでないとオルガスムスに達する事ができませんでした。そして死ぬ時もその方法を選んだのです」。
彼女はそのままヴィルツを溺死させ、夫に「人間を切断できるくらいの道具はないか」と頼んで電動鋸を借りてきた。キッチンの長テーブルに死体を横たえ、鍋に入るくらいの大きさに切断していく。手と頭はオーブンで焼いた。できたら顔はそのまま保存したかったが、だらりと垂れて生前とは似ても似つかない姿になってしまったという。それでも夫人は顔の皮を剥いで冷凍庫で凍らせ、夜毎それを枕元に置いては、抱いたり頬ずりしたりキスしたりしていた。腐敗が始まっていた部分はビニール袋に詰め、発見現場となる公園に捨てた。残りの部分は食用として冷蔵庫に保存した。
マルティナは異常性欲の持ち主であった。ハムスターを生きたまま放り投げて蛇や蜘蛛が食うところを見て性的興奮を覚え、またある時は鼠やハムスターの心臓を生きたまま抉って自ら試食したとも言う。
裁判で彼女は公訴事実に関しては争わなかったが、「殺人ではなく別の世界へ送り出す手助け」を主張し続けた。普通なら荒唐無稽とされて残虐な損壊の仕方から大抵終身刑にはなるだろう。
ところが1985年12月18日、裁判所は「殺意なき殺人」罪を適用し、彼女は懲役たったの8年を宣告されたのだった。

これも彼女の輝くばかりの美貌のなせる業だったのではないだろうか。ドイツは確かずっと参審制を取り入れている。裁判員制度はこのシステムに非常に近い。公正なつもりの判決でさえ、「やっぱり美人は得」なのらしい。
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Irony, Satire and Truth

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北落師門

Author:北落師門
特徴: 研究者気質(何)、厭世家、人嫌い、典型的ブックワーム。
大量の学問だけで出来ていると思う。詭弁と皮肉で武装している。
目の悪さが半端ない。あと、電話と食事と世間話が天敵。
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