InAequabilitas

Date : 2009年07月

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手錠と法廷

この記事。笑った。

「気にしませんからやりましょう」、か。いい人だ(笑
というか、右手を外したところでもう「拘束されていない」状態に近いんじゃないかとも思うのだが…まあ、法的には拘束は拘束だな。

それにしても何故マスコミは「被告」にこだわるのであろう。「人」一文字つけたって別に変わらんじゃないか。
元裁判官の井上薫氏はこんな話を紹介されている。

井上氏が民事裁判の法廷に立ったときであった。当然裁判長だから被告のことは被告と呼ぶ。「では、被告…」
なんだか反応がないので見てみると、その被告の老人はステッキを振り回している。怒り狂っているのである。罪を犯したわけでもないのに「被告」と呼ばれたことにブチギレしたらしい。
井上氏が「これは法律用語で」とか「刑法のは被告ですよ」とか散々なだめたが老人の怒りは収まらない。仕方がないので、その法廷では名前で呼ぶ事にした。

こんな事も実際にあるのだ。マスコミ用語の「容疑者」、「起訴事実」、他にもあるけど裁判員制度も始まったんだし、正式なほうを使った方がいいと思う。僕だって小学校卒業するまでは被告と容疑者が正式名称だと思い込んでいた。そうだ、教育にも影響が(考え過ぎだ

そう言えば、結構真面目な服を着た被告人がサンダル履きで入ってくるとギャップに笑う。あれ止めればいいのに…。
京都地裁に傍聴に行った時、冒頭陳述のなかの被告人の脅し文句(恐喝だった)がみんな京都弁でちょっと可愛かったのを思い出した。それにしても京都地裁は法廷が綺麗だった…。目の前が京都御所だったりもするし。
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ゲルセミウム・エレガンス総まとめ―後半

←前半はこちら

さて、毒性である。しばし嫌がらせのように化合物の名称が続くので御注意。
根からはコウミン(Koumine)、コウミニン(Kouminine)、ゲルセミン(Gelsemine=Gelsemin, C20H22N2O2)、コウミニシン(Kouminicine)、コウミニジン(Kouminidine)、センペルヴィリン(Sempervirine)、コウミシン(Koumicine)、コウミジン(Koumidine)が、また茎からはコウミン、センペルヴィリン、フマンテミン(Humantenmine)、フマンテニン(Humantenine)、フマンテジン(Humantendine)、フマンテニリン(Humantenrine)、アクアミジン(Akuammidin)、16-Epivocarpine、19-hydroxy-dihydrogelsevirine、Dihydrokoumine、19(R)-Kouminol、19(S)-Kouminolが、そして全草からフマンテニン、フマンテニリン、N-desmethoxyrankinidine、11-hydroxyrankinidine、11-hydroxyhumantenine、11-methoxyhumantenine、N-methoxytaberpsychine、N-methoxyanhydrovobasindiol、Gelsamydine、Gelselegine、11-methoxy-19(R)-hydroxygelselegine、19-hydroxydihydrokoumine、20-hydroxydihydrorankinidine、N-Desmethoxyhumantenine、15-hydroxyhumantenine、Gelsemoxonine、Gelsemamide、11-methoxygelsemamide、19(R)-hydroxydihydrogelsevirine、19(S)-hydroxydihydrogelsevirine、19(R)-acetyldihydrogelsevirine、19(R)-hydroxydihydrogelsemine、19(Z)-akuammidine、ゲルセミシン(Gelsemicine, C20H26N2O4)、ゲルセヴェリン(Gelseverine)、ゲルセジン(Gelsedine)などのアルカロイドが抽出されている。毒性が特に強いのは根、葉だが、極め付けは若葉である。福建産のものにはゲルセミン、コウミン、コウミニジン、コウミシン、コウミジンが、広東産のものにはコウミン、コウミニジン、コウミジン、コウミシンが含まれるという報告がある。
一般的には全草10g(葉にして2-12枚)、根2-8g、若葉10-38枚、浸剤(どう翻訳すればいいか思いつかなかった)3.5mlを内服すると重い中毒を引き起こす。根3gや若葉7枚、それどころか茎と葉の搾り汁で30滴ほどで死に至った事例もある。皮膚に塗布するだけの場合も、大量なら中毒を引き起こすことがある。経皮吸収もされるということか。花粉などにも毒を持つので、蜂蜜に含まれているだけでも死に至る重篤な中毒に繋がる可能性もある(因みに蜂は冶葛の毒で中毒を起こすという)。
「葉3枚とコップ1杯の水で死ぬ」と民間では言われるそうだが、水よりもアルコールと一緒に用いるとより毒性が強い。ジャスミンティーの中毒事件からも考えられるように、水にもアルコールにも可溶なのだろう。アルコールの方が更に易溶だという事だろうか。純粋成分である場合のゲルセミシンの致死量は0.05mg/kg、コウミニシンの致死量は0.8mg/kg(ウサギMLD)。全体としては神経毒に分類される。皮下注射と経口摂取では毒性発現に大きな差はないようだ。矢毒とした場合、生体内で長期にわたって効力を持続する。消化管から最もよく吸収される。ニコチンやシクトクシン(ドクゼリの有毒成分)に性質が似ており、主に呼吸中枢を抑制する。
ゲルセミシンとゲルセミン:
gelsemicinegelsemin
(ゲルセミウム・アルカロイドの構造式:)
Gelsemium Alkaloid


冶葛の毒は全て中枢神経に対して作用する。迷走神経、循環器への作用や神経節の麻痺はあまり認められない。呼吸中枢に対する直接作用の為、死因は呼吸麻痺がほとんどである。これらの特徴の為、実験動物に致死量を2回注射して呼吸が停止しているにも関わらず心臓が拍動し続けている事もある。だが別の文献を参照すると、心筋を直接刺激し、心拍異常を引き起こすとも書いてある。抗アセチルコリン作用を持つためである。
植物体のどの部分を摂取したかによって症状の出る速度が違ってくる。根本体や乾燥根では0.5-2時間経たないと症状が現れない事もあるが、新鮮な若葉又は根の煎汁を摂取した場合は速効である(1-8時間以内に死亡)。また、乾燥葉の粉末でも症状は速く出るらしい。大抵は摂取後1時間ほどで症状が現れる。しかし、<スイカズラ湯>の中毒事故(前半を参照)では、摂取後わずか10分で悪心・嘔吐などの症状が、また約30分で腹痛・痙攣・眩暈・呼吸困難等の症状が現れたという。
延髄の呼吸中枢を麻痺させる事は判っているが、他に脳と脊髄運動ニューロンの働きを抑制するようだという事が推測されている。その為、眼瞼下垂、頭部下垂、全身筋肉の弱化などが現れる。主な中毒症状は呼吸困難→呼吸麻痺だが、他に口腔・咽頭の灼熱感、流涎、悪心、嘔吐、腹脹、腹痛、便秘、下痢、眩暈、筋弛緩→言語含糊・発音困難・運動失調・無力・眼瞼下垂、嚥下困難、呼吸筋周囲の神経麻痺、複視、視力減退(失明に至ることも)、瞳孔散大、呼吸の浅深が不規則になる、嗜睡、全身の痙攣、後弓反張、ショック、四肢の冷却・麻痺、顔面蒼白、血圧降下、虚脱、昏迷がある。また、はじめ心拍緩慢であるがのちに速くなる。大抵は不規則な拍動である。呼吸の状態の推移は、速いペースでの深めの呼吸→遅いペースでの浅めの呼吸、或いは不規則な呼吸→呼吸困難・呼吸麻痺。不規則な呼吸によって副次的にアシドーシスを起こす事もある。

病理解剖の所見を見てみよう。まず全身に青紫色の変色がみられる。そして食道及び胃腸粘膜の充血・水腫、局所的な溢血点(胸筋・胸膜・心外膜に多い)、肺水腫が観察される。毒性に鑑みれば理解しやすいだろう。

西洋医療の方面では特効的拮抗薬は報告されておらず、胃洗浄、催吐、瀉下、輸液及び対症療法が専ら中毒時に行われるようだ。だが、漢方医の方面では長らく「鉤吻」として付き合ってきたからだろうか、中毒時の処置の部分が詳しい。
直ちに催吐、胃洗浄を行うところは共通している。胃洗浄には過マンガン酸カリウム溶液(1:5000)もしくは濃い茶を用いる。その後胃粘膜の保護の為、鶏卵白を内服する。同時に温かい食塩水で浣腸を行い、毒物の排泄を促進する為、ブドウ糖溶液を静脈に点滴する。硫酸ナトリウムを経口内服し、胃洗浄を促進させる。
また、毒物を吸着するのに活性炭を用いてもよい。その場合、飲み込んだ毒物の量がわかっていればその10倍の活性炭を数回にわけて与える。活性炭1gを水など1kgに混ぜて経口摂取させるか、直接胃に灌入する(毎日1-2回)。活性炭を用いるときは、患者が嘔吐時に活性炭を吸入しないよう注意すること。
解毒: 1.新鮮な羊(或いは鴨、ガチョウ)の血液300ml(小児100ml)で毎日2度浣腸する。2.黒大豆200gを煎じて服用。 3.アマクサ(カンゾウ)、コガネヤナギ、オウレン、キハダ(オウバク)各9gを煎じ、内服。これらには解毒作用がある。
民間療法では次の幾つかの方法が用いられる。「鴨毛蕉花生油」(何だこれ?)を用いて催吐を行い、次に落花生油を1杯飲ませる。鴨もしくはガチョウの血を大きめの碗1杯ほど灌腸する。鴨の卵3つ分の卵白と落花生油を混ぜたものを灌腸する。バビショウ(タイワンアカマツ)の葉を除いた枝を8本、ニラ1本、ムカデ20-40gを混ぜてすりつぶし、半碗ほどの湯にそれを入れて、濾過したものを飲ませる。ヨウサイ(クウシンサイ)の根と茎(葉を除いたもの)約500gの絞り汁を飲ませる。スイカズラの茎(葉も含む)をすり潰したものとカソナード(赤砂糖)を混ぜて飲ませる、などなど。
対症療法: 腹痛を訴える場合アトロピン0.5mgを皮下注射し、呼吸困難の場合は安息香酸ナトリウムカフェイン、ロベリン、ニケタミドを用い、併せて二酸化炭素を含む酸素を吸入させ、必要時には心肺蘇生を行う。
アトロピン中毒様症状、つまり瞳孔散大・視力減退・口腔内の渇き・動悸・筋無力・悪心・嘔吐・下痢を起こしているときは臭化ネオスチグミンなどを使用してコリンエステラーゼの値を抑え、アセチルコリンの分解を遅らせる。いくつかの症状の改善が期待されよう。
成人では臭化ネオスチグミン1mgを5%のブドウ糖溶液20mlで稀釈して静脈注射する。症状の改善が見られればのちは筋肉注射に変更する。6-8時間ごとに1回ずつ、毎回0.5-1mgを症状が消失するまで与える。
痙攣を起こしている場合は、ジアゼパム・アモバルビタールナトリウム・抱水クロラールを用いる。血圧下降がみられれば血圧を上昇させる薬剤、たとえばドーパミンなどを点滴静注する。心不全にはジゴキシン類を応用する。
鍼灸治療についても何かあったが、僕自身がよくわかっていないので省略。

手元にある限りの文献と読める限りのウェブの情報を総動員して、未だ謎の多いとされる最猛毒植物、冶葛=ゲルセミウム・エレガンスについてをまとめてみた。更に付け加えるところがあれば大歓迎である。コメントなどに遠慮なく書き込んで頂きたい。できたら出典を明記して頂けるとより幸いだ。

香港にてゲルセミウム・エレガンスを(あまり真面目でもなく)探索してみた結果はここ

ゲルセミウム・エレガンスの名前にまつわる小話はここ

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ゲルセミウム・エレガンス総まとめ―前半

[最終更新: 11/19 2011]

「ゲルセミウム・エレガンスほど、ロマンと想像力をかきたて、心を熱くさせる毒草を私は知らない」。
植松黎氏著「毒草を食べてみた」の最後の項はこう始まる。ゲルセミウム・エレガンス(以下、冶葛)は数ある有毒植物の中でも最も強い毒を持っているとされる、マチン科の植物である。

マチン科ゲルセミウム属、学名Gelsemium elegans、英名Chinese Gelsemium(またはPoison Hemlock...ってドクニンジンかよ? 信憑性は微妙)。フジウツギ科とする事もあり、またAPGの分類体系ではマチン科でなくゲルセミウム科とされる。
蔓性の常緑低木で、高6-12m程になる。葉は革質で対生し、楕円形~狭卵状披針形、全縁で先端が尖り、光沢を持ち滑らかで、厚みがある。葉脈は5-7対ずつある。葉の大きさは長さ5-12cm、幅2-6cm。葉柄の長さは6-12mm。茎は円柱形で直径0.5-5cm、樹皮は灰黄色から黄褐色で縦に溝が入る。若い茎は比較的滑らかで、黄緑色或いは黄色をしており、細い縦縞や楕円形の突起がある。また茎は硬くて折りづらく、断面も滑らかにはならない。花期は2月頃で、花径約2cm、筒形、芳香ある黄色い五弁花で、花序は集散花序である。花弁の内側に赤い斑点が入っている。花冠の大きさは1.2-1.9cm、裂片は卵形で先が尖るか或いは丸く、5-9mmの大きさになる。萼片も5枚あり、長さ4mmほどで卵状披針形(三角形~楔形)をしており、繊毛が生えている。花柄の長さは3-8mm。雄蕊は花冠から突出し、花糸の長さは3.5-4mm、葯は狭卵形で1.5-2mm。子房も卵形で大きさは10-14mm長、6-8mm幅で、毛はない。花柱の長さは0.8-1.2cmで、柱頭には毛が生えている。果実は楕円形の朔果、2筋の縦線があり、熟すとこれに沿って裂ける。1つの果実に20-40個の種子が入っており、種子は膜質で腎形か楕円形、毛が生えており、不規則な形の翼を持つ。大きさは直径5.5mmほど。根は黄色い(因みに甘いらしい)。「医用本草綱目」によれば、茎を折ると青煙が立つという(本当か?)。一年生という文献と多年生だという文献がどちらも存在する。
Gelsemium elegans photo2Gelsemium elegans photo2(クリックで拡大)
G.elegans1G.elegans2
画像→花と葉 花近撮  実と葉 熟した実

日本には産しない。中国、インド、ベトナム、タイ北部、インドネシア、マレーシア、ラオス、ミャンマー北部に自生する。日当たりの良い山の斜面、道端の草むら、低木の茂み、雑木林に生える。本草綱目によると陝西鉤吻の自生地は(中国の)南越山、寒石山、益州。「酉陽雑俎」には邕州と容州の間(広西省付近)に分布するとある。ウィキペディア(英語版)では、中国の福建、広東、広西、貴州、海南、湖南、江西、台湾、雲南、浙江の各省の名が挙げられている。中国南部から南東部だ。長江の流域に多く見られるという。海抜200-2000m(特に650-1700m)のところによく生える。また、香港では「香港四大毒草」のうちに数えられている(残りはマチン、ストロファンツス、チョウセンアサガオ)。
植えている薬用植物園も日本国内にはほとんど無いらしいが、ひとつ見つけた。
日本新薬株式会社が持っている、山科植物資料館。京都市山科区にある。一般公開はされていないようなので、電話とかで問い合わせるしかないようだ。

別名はそれこそ掃いて捨てる程存在する。冶葛(ヤカツ)、鉤吻、断腸草、胡[葫]曼藤[草]、野葛、毒根、黄藤、火把花[草]、大茶薬[藤]、除辛、固活、吻莽、爛腸草、朝陽草、虎狼草、黄花苦晩藤、黄猛菜、大炮草、苦晩公、荷班草、発冷藤、藤黄、大鶏苦蔓、羊帯帰、金勾吻、苦吻、毒極大茶葉、山砒霜、豬人參、麻醉籐、水莽草、亡藤、土農薬、ランゴン、シュア・ノーツァ。除辛は細かく言えば陝西鉤吻の別名である。「断腸草」や「爛腸草」というのは、中毒を起こした人の腸が黒く爛れ、ひどい腹痛に苦しみながら死んでいくことから名付けられたという。
因みに、中国語では「鉤吻」は冶葛とツタウルシの両方を表す。しかもツタウルシも「野葛」と呼ばれる事がある。冶葛と野葛は発音が同じ(ye3 ge2)だ。余り使われない「冶」より「野」のほうが受けたのだろうか。僕の想像に過ぎないが。

ゲルセミウム属は3種あり、冶葛、カロライナジャスミン(G. sempervirens)、ランキンジャスミン(G. rankinii)がそれだ。カロライナジャスミンはそこら辺の花屋でも売っているし、それどころか線路脇のフェンスに平然と絡み付いている事も多いので目にする事は多いだろう。冶葛には敵わないが、アメリカでは猛毒指定されているほど毒性が強い。何を思ったのかジャスミンティー(もどき)にしてしまい中毒事故を起こした人がいるそうだ。この3種は常緑蔓性木本で葉が対生し、花は筒状、そして猛毒という共通点を持つ。
冶葛自体の中毒事故も稀ではない。蔓性であるため、茶の木などに絡み付いていたりすると茶摘み期の茶の葉と冶葛の若葉が良く似ている為に誤って一緒に摘まれたりすることもあるのだとか。しかし死ななかった者のなかには逆に治す手のなかった奇病が治った者がいるという言い伝えがある(科学的根拠はなし)。本当だとしたらまさに「毒を以て毒を制す」だということになる。また、少数民族の間では冶葛はアヘンの毒消しになるとも言い伝えられているという。
中国の湘北地区に伝わる民謡の一節に「青叶子,红棍子,吃了困盒子」というのがある。「青い葉、赤い茎、食べたら箱に入っちゃう」とでも訳すべきか。「箱に入る」とは「棺桶に入る」ことである。
スイカズラと間違われることもよくあるようだ。子供がそれと間違えて蜜を吸ったり、また学生が「スイカズラ湯」を作って実際に一人が死亡する事故や労働者が「涼茶」にしたりする事故(これも一人が死亡)も起こっている。

冶葛は漢方にも使われる。奥井真司氏著の「毒草大百科」には「最近の薬草市場ではめったに見ることができなくなり、幻の植物となっている」と書かれているが、淘宝網で鉤吻と入れても普通に出てくる(検索結果)。本場の薬草市場がどうなのかはよく判らないが。根を水洗いして乾燥させて用いる。根は周年採ることが出来るが、本草綱目には正月と書いてある。効用は喘息、リューマチ、解熱、性病、鎮痛(頭痛、神経痛、打ち身、関節炎その他)、水腫など。天然痘にも使われるようだ。毒性が強過ぎる為、塗布など必ず外用である。数多の漢方書には「内服は厳禁」と書いてある。外用であっても、塗布したものは30分で取り除かなければならないとも(水泡ができてしまうため)。また、農村部では殺虫剤(ウジやボウフラに対して効く)として使われていたこともあるそうだ。
本草綱目(明、李時珍)には「気味―辛、温、有大毒」と記されている。「気味」は現代中国語ではにおいのことだが、ここでは性質の事を表している。「辛」は味で、文字のまま。口に入れるとピリピリするのだろう(→中毒症状/口腔・咽頭の灼熱感)。(※知人の中国人によると、辛は「辛い味」というわけではないらしい。なんというか、ワサビのような独特の匂いというか後味を持っているということのようだ。)「温」は薬物の四気のひとつで、四性ともいう。「熱」とともに寒性の病気に用いる。たとえば西瓜は「涼」なのだが、夏に西瓜を食べ冬に食べないのは旬だけの問題ではなく、冬に食べると体が冷えてしまうからだ。「涼」は「寒」と共に熱性の病気に効果が出る。それ以外に「平」があるが、これは作用が穏和な薬物である。最後の「有大毒」は、もう説明するまでもないだろう。
因みに、「広西中薬誌」には「味苦、性寒、有大毒」と性質としては正反対のことが書かれているらしい。清代の沈濤による記述(瑟榭丛谈)における冶葛についての記述は「人马误食之,立毙 (人間や馬が誤ってこれを口にすれば即座に死んでしまう)」というもの。「立(=即座に)」というのは毒の速効性を示しているのだろうか。
ところが豚や羊に対しては、毒は全くその効果を示さないどころか、冶葛を食した場合逆に毛並みに艶が出たり脂肪が増えて肥えたりするのだという。本草綱目にも「"断腸草"人誤食其葉者致死、而羊食其則大肥(冶葛の葉を食べた場合人間は死ぬが、羊はよく肥える)」とある。しかし今のところ、何故そうなるのかはまだ判っていない。

また、冶葛は生薬として正倉院に納められている。陶器の壷に入れられており、番号は最後の60番。納められた当時(756年6月21日)は14kg(32斤)あったが、現在は390gしか残されていないそう。そして用途は不明だという事だ…。
1996年、冶葛がゲルセミウム・エレガンスである事を科学的に証明する試みが持ち出された。調査を依頼されたのは千葉大学薬学部の相見則郎教授。渡されたサンプルは僅か2.8gだったという。だが相見氏はそれでも、そのサンプルから純粋アルカロイド、ゲルセミン、コウミン、ゲルセヴェリン、センペルビリンを抽出し、冶葛=ゲルセミウム・エレガンスである事を証明したのだ。その上、1200年以上経過したにも関わらず、冶葛の毒性が全く劣っていない事も明らかにされた。

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北落師門

Author:北落師門
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