InAequabilitas

Date : 2009年01月15日

CURRENT MOON

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代理ミュンヒハウゼン症候群

自分の娘数人に水道水やスポドリを注射して殺したとされる母親の事件について。

動機は「周囲の同情を引きたかったから」。
殺意は「看病するつもりだった」と否定。

僕はこれは代理ミュンヒハウゼン症候群だと見ている。
これは虚偽性障害のひとつで、ただのミュンヒハウゼン症候群との違いは傷害の対象。ミュンヒハウゼン症候群は自分、代理のほうは文字通り「自分の代理の」誰か―特に母親に多いのが自分の子供だ。
児童虐待として母親が逮捕された有名な例がふたつあって、うちアメリカの事例では「難病と闘う少女、看病を続け健気な母親」としてヒラリー・クリントンから表彰も受けていた。
だけどこれは虐待行為が主なのではなく、患者のなかでは看病→周りの関心を得る、というのがポイント。殺す気があるわけない。殺しちゃったら周りの憎悪とかしかないから。バレなくても結局は一時の同情以外何も得られないから。

この話について―知人と議論していた。僕が彼女を代理ミュンヒハウゼン症候群だと言ったのが、「子供を傷つける親など悪魔だ」派の知人には気に食わなかったらしい。
以下、太字を僕の発言とする。

「最近は病気などについての知識が普及している。だから病気を装って刑の減軽か免除を図ったのだろう」
「代理ミュンヒハウゼン症候群で刑が軽くなった事例は聞かない。そのうえ、代理ミュンヒハウゼン症候群なんかより統合失調症を装った方がずっと確率的に得だし、知識もずっと普及している」
「減軽されないという事を知らなかったのではないか」
「代理ミュンヒハウゼン症候群について学べば、自ずと刑事事件についてが絡んでくる。こんなに細かく仮病しておいて、有名な事件例を知らなかったというのか」
「誰もお前みたいに細かく調べたりはしない。おおまかに演技していたに過ぎない。なぜ殺したいのに6人も生んだんだ」
「殺したかったとは限らない。まさか水道水とかを注射して死ぬまでとは思っていなかったのだろう。アメリカの事例ではバクテリアまで注射しているのだから」
「病気についてそんなに知っておいて、血管にスポドリなんかが入ったらヤバいことを知らなかったわけがない。殺す気だったんだ」
「病気は自然に出た症状で仮病からではない。そう見れば血液に対する知識もなくて当然だ。看病するつもりだったと本人も言っている」
「殺意を否定すれば過失致死とかになって刑が軽くなるからだ」
「ふつう看病する気でしたって言って殺意を否定するものか?『飲むより速いと思ったから』『悪ふざけです』などなど、他にもいっぱいあるだろう。それに殺す気でいて周りの同情を引きたかったですなんて言うか」
「こんなのを病気とすること自体間違ってる。子供を傷つけたり殺したりするのは許せない。育児に疲れるなら生むな。無理心中とかと同じ心理なのではないか。自分が死んで周りが生きているのが気に食わないと」
「れっきとした虚偽性障害だし、それに育児に疲れたから傷つけたと決めつけるな。代理ミュンヒハウゼン症候群ならば、治療される権利はある。減軽はできない気がする(心神耗弱ではないと思うので)が、治療は受けさせるべきだ」
「そんな必要はない。犯罪者―とくに殺人者はみんな悪魔だ。人面獣心だ」
「一律にそう呼ぶのは僕は反対だ」

知人の問題は論点先取にある。自分の「信念」にあくまで拘ろうとしているので論証が間違っていく。結局最後まで知人は自分の立場を譲らなかった。
僕も「彼女が代理ミュンヒハウゼン症候群である」という前提に基づいて対抗していたのでこれだけ見ればすこしおかしい。もしかすると本当に殺す気で、本当に刑の減軽を狙っていて、本当に仮病なのかもしれない。
その可能性は否定してはいないが、パーセンテージとしてひじょうに低いと思っている。

僕は一律に犯罪者たちを悪魔だとか呼びたくはない。
残されていく家族が不憫で、無理心中を決行した鬱病者を憎めるか。
政治的に邪魔だった貴族たちを殺していったボルジア家のひとびとの心を、「全く理解できない」と首を振るか。
それに―自分がいつの日か人を殺すことが決してないと断言できるか。
僕は事件解釈が被告人に甘いと言われる。それは世間が被告人という「異端」たちに対して極端に冷たいからではないのか。被告人だけではない。共同体からはみ出す者を切り捨てていこうとする社会だ。
少数の反対意見はすぐさま鎮圧。ちょっと違った人をみると「ありえなくなーい?」とか言って拒否感を剥き出しにする。
今までと同じ考えや行動を繰り返して異なった結果を待つのは狂気である、とアインシュタインは言った。いまはむしろ同じどころか落ちて行っているのではないのか。

ああ…被告人擁護から社会の固執まで飛んでしまった。
固定概念や常識からある程度離れた方がいい。不変というのも僕は好きだが、見せられていないものが見えてくるのはもっと楽しい。
ときに社会の暗礁を突っついて逆らってそして叩かれてみる。叩かれれば痛いが、躍起になった相手の顔を見るのは爽快だよ。議論するときに相手が一瞬言葉に詰まって、その後まくし立てるように喋り出すのを見るように。



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Irony, Satire and Truth

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北落師門

Author:北落師門
特徴: 研究者気質(何)、厭世家、人嫌い、典型的ブックワーム。
大量の学問だけで出来ていると思う。詭弁と皮肉で武装している。
目の悪さが半端ない。あと、電話と食事と世間話が天敵。
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