InAequabilitas

Category : 有毒植物

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ゲルセミウム・エレガンス小話—冶葛・鉤吻・断腸草

ゲルセミウム・エレガンスには数多の異名があると以前書いた。そのうちの「冶葛」と「鉤吻」、そして「断腸草」について書いてみることにする。

冶葛と鉤吻
上のリンクの記事で、正倉院に納められた「冶葛」がゲルセミウム・エレガンスであることを同定した実験のことを紹介している。これにより冶葛がゲルセミウム・エレガンスであることは間違いないことがわかったのであるが、伝統的な生薬の「鉤吻」が果たして「冶葛」と同一であったかについては疑義が存在するらしい。
ほとんどの本草書では、冶葛は鉤吻と同一の植物を起源としており、その違いは単に地上部(鉤吻)であるか根部(冶葛)であるかのみと考えられているのであるが、これらの起源植物は別であるという説が存在する。代表的な論者は陶弘景(『本草経集注』)である。
陶は「鉤吻」は北方の有毒植物であり、魏晋の間に南方から伝わった猛毒植物が「冶葛」であると考える。そのため、冶葛はもとの鉤吻と区別するために「秦鉤吻」と呼ばれることもあるのだという。
『本草経集注』には、「野葛(注: 冶葛に同じ)は是 根にして状は牡丹の如し。(中略) 鉤吻は是 別の一草で、葉は黄精に似て茎は紫、当心抽花は黄色」と記述されている。黄精とはユリ科のカギクルマバナルコユリ(日本ではナルコユリによって代用されている)のことであり、葉は平行脈であり細長い。楕円形で網状脈の葉をもつゲルセミウム・エレガンスとは全く異なっている。
それでは鉤吻とは何者なのか。
「鉤吻」とは、実は古代では毒草全般のことを指す言葉なのである。そのため、地方により様々な「鉤吻」が存在していた可能性があるのだ。たとえば『金匱要略』では、「鉤吻と芹菜相似たり」と記述されている。セリは羽状複葉を持つため、ナルコユリともゲルセミウム・エレガンスのどちらともかなり違った雰囲気を持っている。そのため、『金匱要略』で記述されている鉤吻と『本草経集注』で記述されている鉤吻はまた別の植物であると考えられよう。
現代においては、生薬で「鉤吻」といったら必ずゲルセミウム・エレガンスのことを指す。今では冶葛という呼び名は、漢方の起源国中国においてはあまり用いられず、主に「断腸草」と「大茶薬」が鉤吻の別名として広まっている。また、中国語で「鉤吻属」といったらゲルセミウム属のことだ。それほどに鉤吻=ゲルセミウム・エレガンスという図式が定着してきているのである。

参考: 鉤吻と冶葛(野葛)



断腸草という名前
鉤吻と呼ばれる植物が複数あるらしいことは上に書いた。それと同じように、ゲルセミウム・エレガンスの別名のひとつである「断腸草」も、複数の植物に与えられた呼称なのである。
中国において「断腸草」と呼ばれる植物は14もの科にわたっている。それらを以下に列挙する。

1. Gelsemium elegans (冶葛、マチン科ゲルセミウム属)
2. Illicium simonsii (シキミ科シキミ属)
3. Illicium lanceolatum (シキミ科シキミ属)
4. Aconitum kusnezoffii (キンポウゲ科トリカブト属)
5. Aconitum flavum (キンポウゲ科トリカブト属)
6. Clematis aethusifolia (キンポウゲ科クレマチス属)
7. Chelidonium majus (クサノオウ、ケシ科クサノオウ属)
8. Meconopsis chelidoniifolia (ケシ科メコノプシス属)
9. Corydalis temulifolia (ケマンソウ科キケマン属)
10. Corydalis temulifolia subsp. aegopodioides (ケマンソウ科キケマン属)
11. Corydalis sheareri (ケマンソウ科キケマン属)
12. Corydalis shimienensis (ケマンソウ科キケマン属)
13. Corydalis flexuosa subsp. omeiana (ケマンソウ科キケマン属)
14. Corydalis flexuosa subsp. pseudoheterocentra (ケマンソウ科キケマン属)
15. Corydalis taliensis (ケマンソウ科キケマン属)
16. Corydalis duclouxii (ケマンソウ科キケマン属)
17. Corydalis pingwuensis (ケマンソウ科キケマン属)
18. Corydalis longicalcarata (ケマンソウ科キケマン属)
19. Corydalis longicalcarata var. non-saccata (ケマンソウ科キケマン属)
20. Corydalis davidii (ケマンソウ科キケマン属)
21. Corydalis feddeana (ケマンソウ科キケマン属)
22. Corydalis linstowiana (ケマンソウ科キケマン属)
23. Corydalis incisa (ムラサキケマン、ケマンソウ科キケマン属)
24. Corydalis edulis (ケマンソウ科キケマン属)
25. Corydalis moupinensis (ケマンソウ科キケマン属)
26. Corydalis ophiocarpa (ケマンソウ科キケマン属)
27. Corydalis racemosa (ホザキキケマン、ケマンソウ科キケマン属)
28. Corydalis pallida (ミヤマキケマン、ケマンソウ科キケマン属)
29. Corydalis foetida (ケマンソウ科キケマン属)
30. Oxytropis glabra (マメ科オヤマノエンドウ属)
31. Stellera chamaejasme (ジンチョウゲ科ステレラ属)
32. Tripterygium wilfordii (ニシキギ科クロヅル属)
33. Crawfurdia maculaticaulis (リンドウ科ツルリンドウ属)
34. Strophanthus divaricatus (キョウチクトウ科ストロファンツス属)
35. Cryptolepis buchananii (ガガイモ科クリプトレピス属)
36. Hyoscyamus niger (ヒヨス、ナス科ヒヨス属)
37. Buddleja officinalis (フジウツギ科フジウツギ属)
38. Jasminum coarctatum (モクセイ科ソケイ属)

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セッコウソウ

h.longifloraセッコウソウ(雪香草、Hippobroma longiflora = Isotoma longiflora = Laurentia longiflora = Lobelia longiflora)は、キキョウ科ヒッポブロマ属の多年生草本。別名にはベツレヘムの星などがある。原産地は西インド諸島である。茎高は50cm程度になり、長10-15cmの披針形あるいは倒披針形の葉が互生する。葉縁には鋸歯がある。花期は4-11月頃で花径2-3cm、花冠は白く5裂する。
全草にロベリンとニコチンを含み有毒。葉や茎を折ると白い乳液が出るが、これが皮膚につくと皮膚炎を起こす。また乳液が目に入ると少量でも失明する危険性がある。ロベリンとニコチンは両方ともピリジンアルカロイドであり、少量では向精神的作用、多量では嘔吐・筋肉麻痺・震顫などを引き起こす。属名のHippobromaはギリシャ語の馬(Hippos)と激しさ(Bromos)の合成語であり、猛毒のため馬をも狂わせるというのが語源であるらしい。

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ドクウツギ


ドクウツギ(Coriaria japonica)はドクウツギ科ドクウツギ属の落葉低木。樹高1-2mほどになり、花期は4-6月、果期は7-8月である。日当りのよいところに自生する。トリカブト・ドクゼリと並ぶ日本三大有毒植物のひとつでもある。
葉は対生し、小葉は披針形で三本の筋を持つ。茎は赤く、"空木(ウツギ)"の名の通り空洞になっている。花は雄花・雌花に分かれており(雌雄同株)、小さく赤い。雌花には5本の雌蕊があり、雄花には10本の雄蕊がある。果実ははじめ赤く、熟すにつれて黒くなる。果実には甘みがあるため、食用と間違える中毒事故が後を絶たなかったという。種子は半円形で赤茶色をしており、数本の筋が入っている。
神経毒のコリアミルチン、ツチン、コリアリンを全草に含み猛毒である。特に種子には有毒成分が多く含まれる。中毒症状としては流涎・嘔吐・痙攣・呼吸困難・硬直・昏睡などがあり、死に至ることも稀ではない。特に毒性の強いコリアミルチン(C15H18O5)はセスキテルペン骨格を有し、GABAアンタゴニストとして作用する。そのためGABAによるシナプス前抑制が遮断され、中枢神経への興奮作用が表れる。LD50は3mg/kg(マウス静注)。ツチン(C15H18O6)は強力なグリシン受容体のアンタゴニストであり、強い痙攣作用を持つ。

 

今年の夏に某植物園で撮った写真が出てきたので書き捨て。ちゃんと生きております。

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チョウセンアサガオ栽培途上

忙しすぎる!ブログを書く暇も小難しい事を考えている暇もない。何という事だ...!
仕方ないので僕の家ですくすくと育っているチョウセンアサガオD. metelの写真でも晒す。そして解説もなくただ晒すだけ。でもとりあえず確認してみるけれど、チョウセンアサガオとは麻酔・幻覚作用のあるアトロピンを含有する有名な毒草。園芸や脱法ドラッグのほうではダチュラやダツラということが多い。わざわざ育てなくとも、(僕の家の近くにだって)雑草として跋扈している。しかし雑草化しているのはstramonium種やmeteloides種のほうばかりのようだ。
d.metel-sprout5粒蒔いて5粒とも発芽したが、1本死亡。残りの4本は順調に育っている。左の写真が発芽したてのもの。一番早いやつが播種後10日で発芽、遅いやつは3週間もかかった。忘れた頃にやってくる。d.metel-sprout-1右の写真は今さっき撮ったもので、発芽後1ヶ月強経過したところ。野菜のようにモシャモシャと茂ってきている。初めのほうに出てくる本葉は全縁のものがほとんどだが、今では緩い鋸歯が入ったものが多くなってきているようだ。因みに花色は黄色八重だそう。アトロピン含有量が高けりゃ何でもいいのだけれど!
実を言うと僕は今まで栽培に成功したと言えるのはスイセンとシマクワズイモとアサガオだけという途方もない栽培音痴である(笑)。色々な毒草の種を持っているのでトウアズキやら何やら栽培してみたかったのだが、どう考えても無理...というわけで、せめて雑草なら大丈夫だよなと思い立ち、チョウセンアサガオを播種。ついでにいうとセイヨウアサガオも蒔いてみたが危なそうだ。アサガオすら枯らしそうって、僕の栽培能力は小学生以下なのか。反省。

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アサガオで幻覚

暫く前に「脱法ドラッグ規制強化」の記事を見た。ちょっと心配になったのは僕だけではあるまい。とはいえ自分でも意外ながら、僕は未だに違法合法のどちらのドラッグもやったことはない。所持しているだけで満足である。あっ、司法関係の方が見ている場合を想定して書いておきますが僕はいかなる違法薬物も持ってません。本当に。
タバコが禁止されないのにマジックマッシュルームが禁止され、酒が合法なのにマリファナが違法になるくらいだから、そのうち僕が持っているあれやこれやも規制されることになる可能性は十分にある。それでも絶対に規制されることはないと99%程度の自信を持って言える植物がある。アサガオである。
一口にアサガオとは言っても、どんなアサガオも幻覚作用があるわけではない。そもそもアサガオと呼ぶときの定義が曖昧だ。なのでアサガオの説明から。
広義のアサガオはヒルガオ科サツマイモ属のうちの一部の植物をさす。狭義ではIpomoea nil一種のみをさす。これが小学校の時にほとんど誰もが観察日記を付けさせられたであろうあのニホンアサガオだ。子葉も本葉も独特の形をしているため、花が咲いていなくともアサガオかどうかは容易に判る。江戸時代の園芸好きな人々の執念深い改良のお陰で実に様々な花色が存在しており、その他にも桔梗咲きなど花の形が変わったもの、柳葉や斑入りなど葉が変化したもの、蔓が伸びない矮性種など、園芸の方面にとっては星の数ほどの種類がある。但し分類学的には(変種を無視すれば)やっぱりI. nil一種でしかない。
広義のアサガオにはソライロアサガオI. tricolor、モミジバアサガオI. cairica、マルバアサガオI. purpurea、リュウキュウアサガオI. indicaI. violaceaI. arborescensなどが含まれる。さすがにサツマイモI. batatasをアサガオと呼ぶ人はいないか。これらは葉の形・花径・花序などによって区別される。別属で幻覚剤として有名なハワイアン・ベビーウッドローズArgyreia nervosaは和名を実はギンバイアサガオという。因みに由来は葉の裏が銀白色になることから("銀背朝顔")。Wikipediaの長らく放置された誤植(修正しておいた)のせいか「ギンバオアサガオ」という表記がそこら中に跋扈しているが、ギンバオじゃ意味が解らない。

やっと本題の幻覚作用だが、「アサガオ」のうち幻覚剤として何とか利用できるのはI. tricolor、I. purpurea、I. violaceaだけであるようだ。i_tricolor-seeds(ソライロアサガオ I. tricolorの種子。普通の朝顔よりもやや細長い。)
このうちI. violaceaは日本ではあまりお目にかかれない多年生・夜咲という変な品種で、そもそも和名があるのかさえ判らない。しかし、I. tricolorとI. purpureaはちょうど今頃の時期に園芸店やスーパーで種子も苗も容易に手に入れることができる。いわゆる「西洋朝顔」というやつである。I. purpureaは「ドイツ朝顔」として売られていることもある。I. tricolorには、観賞用としても合法サイケドラッグとしても有名なヘブンリーブルーが含まれる。他にはフライングソーサー、パーリーゲートもI. tricolorだが、パーリーゲートはヘブンリーブルーが突然変異したものであるらしい。ところで何故か「ヘンリーブルー」と呼ぶ人がいるみたいなのだけれど、あれはHenry BlueではなくHeavenly Blueだから...。
i_purpurea-seeds(I. purpureaの種子)
これらはいずれも葉がハート型をしており、花径は中くらいからやや小振りである。ソライロアサガオとマルバアサガオは違いがあまりはっきりしないが、僕はとりあえず花の中心が黄色なのがソライロアサガオ、赤系や白なのがマルバアサガオと大雑把に見分けている。違うかもしれない。
幻覚剤としての評判はあまり芳しくないらしい。肝心の幻覚成分であるリゼルグ酸アミド(=エルジン=LSA=LAA)の含有量がウッドローズやベビーウッドローズに比べて少なく、パーリーゲートで0.02%、ヘブンリーブルーで0.035%(0.01%という文献も)に留まる。そうはいってもベビーウッドローズだってたったの0.04%である。第一にLSAの効力はLSDの5-10%ほどしかない。だがそうではあっても、LSDは50μgという極微量からサイケデリック体験が起こるため、それをLSAに置き換えてもやっぱり幻覚が起こるのはかなりの少量からなのだ。
i_purpurea/nil(I. purpurea(左)とI. nil(右)の種子の比較。西洋朝顔のほうがやや日本朝顔より小さいようだ)
2chなどを見てみると人柱になって頑張ってる人が適量を模索していたりするが、そうしなくたってとある本(Poisonous plants of California; T.C. Fuller, E. McClintock)が「200-300粒のソライロアサガオ種子は300μgのLSDと同等の効果を発揮する」と書いている。大体1粒=LSD1μgと考えてよいということだろう。もちろん種子の質にもよるのだが、実際2chの人柱たちのレポを見ると100粒で結構なサイケ体験が現れているようである。

だが、ニホンアサガオと同じく種子にはファルビチンなどが含まれているため、そのまま食べた場合腹痛と下痢は必然的に訪れる。空腹状態で摂取するなど色々な「通過儀礼」の回避方法が提示されているが、ここは純粋に化学で行こうじゃないか、異なる溶媒に対する溶解度の違いを利用して…と考えて調べ始めたら、ファルビチンがあまりにもマイナーな化合物であるために詳しい溶解度のデータが見つからない!構造式もないため極性から溶解度を推測する事も叶わない。LSAのほうは水にはあまり溶けないというが、これも詳細データはない。"Sparingly soluble"じゃ漠然としすぎているじゃないか。しかし塩基性の溶液には溶けるかもしれないとのこと。ファルビチンは少なくとも配糖体であるらしいので、多分極性は低めなのではないかと思う。ポルトガル語のあるサイトによると前述とは逆に、LSAは水やメタノールなど極性溶媒、特に酸性環境下で溶解度が高くなり、ファルビチンはベンゼンやエーテルなどの非極性溶媒で除去することができるという。ただ、僕はポルトガル語なぞ全く以て読めないのでGoogle先生に助けを求めたということを白状しておかなければならない(笑)。
純粋なLSAとしては、一度の使用量は0.6-1.0mgが推奨される。1.0mgで十分強い効果が得られるらしい。ヘブンリーブルー種子では20-50粒ほどで弱い効き目が現れる。それでも合わない体質であれば、大量に摂取しても下痢になるくらいで全くサイケ効果も出ないとか。効果が発現するのは摂取後30分程度からで、短い場合は4時間、長ければ12時間ほどトリップが持続する。
他にもLSAを含む植物はあり、例えば何度も挙げたハワイアンベビーウッドローズArgyreia nervosaやハワイアンウッドローズMerremia tuberosa、ヒルガオCalystegia pubescensなどがそれである。いずれも種子にLSAを含んでいるわけだが、ヒルガオは滅多に結実しない。但しとある人柱がヒルガオの乾燥葉を喫煙してみたそうだが、効果はとりあえずあったのらしい。試す価値はあるかもしれない...?

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Irony, Satire and Truth

Biography

北落師門

Author:北落師門
特徴: 研究者気質(何)、厭世家、人嫌い、典型的ブックワーム。
大量の学問だけで出来ていると思う。詭弁と皮肉で武装している。
目の悪さが半端ない。あと、電話と食事と世間話が天敵。
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